Remnant(JB-POT直前講座9)
Remnant、本来は残り物やら切れ端と言った意味である。心エコー業界では解剖学的な胎児期の遺残構造物をさす。試験に出題されそうなRemnantを列記すると
1.PFO;Patent Folame Ovale 卵円孔開存
健康成人においてもPFOは約25%の症例で、LA>RAの圧格差により機能的に閉じているだけであり、器質的には閉じていない。よって、咳などによるRA圧の上昇によって、瞬間的にPFOが開くことはまれではない。心臓麻酔関係では、opp pump CABGのスタビライザー圧迫や、術中肺塞栓にともなうRA圧上昇などで開くことがある(あんまり遭遇したくない状況であるが)。
直前講座8で前述のように、LVASの麻酔などにおいてPFOの有無を確認するよう要求される場合がある。具体的には、Valsalva動作(挿管中ならば肺を加圧して急に離すと、一時的にLA圧<RA圧となる)や発泡剤(あるいは単に泡の入った生理食塩水)によるコントラストのLAへの移行、によって確認する。
2.PLSVC; Persistent Left Superior Vena Cava 左上大静脈遺残
胎生期には上大静脈は左右に2本あり、発生の過程で右側で一本に合流してゆくが、なぜか上大静脈が2本のまま残っている人がいる。PLSVCは冠静脈洞(coronary sinus)に開口することがほとんどで、このばあいのcoronary sinusは拡大していることが多い(10mm以上)。
左上肢の点滴ラインより泡の入った液体を注入するとcoronary sinusに泡が出現することで確定診断できる。PLSVCそのものは治療が必要ではないが、逆行性心筋保護液の注入が困難であり、また人工心肺の脱血管が1本余分に必要になる(あるいはクランプする必要がある)。
まれに、拡大したcoronary sinusのLA側に窓状の欠損をともない、そこを経由するL→Rシャントを併発するものがあります。(私も文献で読んだだけで実際にみたことはありません)。Unroofed type ASDと呼ばれます。(ASDの出題ポイントについては後日)。
3.Eustachian Valve
RAとIVCの接合部にたまにみられる薄い膜状の三日月型の弁。大きいとIVCへの脱血管を挿入する際に切り取る必要がある。またASD閉鎖術で間違えてこの弁を閉じてしまった、という症例報告もある。
4.Chiari's network
RA内に浮遊する網や水草のような構造物。発生学的にはEustachian Valveがさらに網状に退化したもの。治療の必要はない。
5.Thebesian (Thebasian) Valve
coronary sinusのRAへの開口部付近にたまにみられる弁。治療の必要はない。
3~5は「RA内にあるのは(ないのは)どれか?」といったスタイルで出題されることも考えられます。
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コメント
臨床検査技師です。
日本超音波医学会の心エコー認定試験の勉強中です。
冠静脈洞の拡張と左上大静脈遺残の関係が理解できず
ネットで検索。ヒットしました。
非常にわかり易い説明有難うございます。
おかげで、今夜は安心して眠ることができます。
投稿: 松田勝 | 2008年1月14日 (月) 20時38分