cardiac tumor (JB-POT直前講座17)
ほぼ一週間ぶりの更新です。
主人の建築事務所関連の雑務に追われておりました。(このブログのタイトルも「女医の仕事&家庭&建築事務所の三立日記」に変更すべきか?)建築関連の話題は試験後までおいといて・・・
試験直前だというのに、(少ないながらも)愛読者の皆様申し訳ありませんでした。
cardiac tumor ご存知、心臓腫瘍のことである。
一般市中病院の心臓手術の現場では、ほぼ「心臓腫瘍=LA myxoma」なのだが、JB-POT出題者の多くが所属するのは大学病院であり、myxoma以外の腫瘍も目にすることがある。なおかつ、医者というものは(とくに大学病院勤務医は)「珍しいものをみつけると、他人に見せびらかしたくなる」習性をもつ者が多い。しかしながら、各地のTEE講習会では、「MRと弁形成」や「LV拡張能」などに時間をとられてこの疾患については割愛されることが多い。よって、本日は「cardiac tumor」についてまとめてみたいと思う。
当然のことながら「MRと弁形成」や「LV拡張能」は間違いなく出題されるので、講習会内容などをよく自習しておいてほしい。
1.Myxoma 粘液腫
成人でもっとも頻度の多い、原発性心臓腫瘍である。圧倒的にLAに多いが次いでRAに多い。多くの場合、有茎性でIAS(Intra-Atrial Septum)のfossa ovalisに付着し、心臓の拍動にあわせてプラプラしている。良性腫瘍だが、ちぎれてbrain emboliをおこす事もあるので摘出手術の適応がある。麻酔上の注意としては、導入時のSVR下降にともない相対的にhypovolemiaになり心室が小さくなると、腫瘍が詰まって循環虚脱をおこしかねないので、充分な輸液が必要である。
2.LHIAS; Lypomatous Hypertrophy in Intra-Atrial Septum
心房中隔の脂肪過形成。TEEでbi-caval view(90度)にすると、薄いfossa ovalisの前後に暑い脂肪腫(2cm以上)が見えるため、「ダンベルシェイプ」と呼ばれる。また、心周期に同調する動きが無い。基本的には治療の必要がない。
3.Rhabdomyoma
小児でもっとも頻度の多い、原発性心臓腫瘍である。tuberous sclerosisとの関連が指摘されている。これの悪い親戚にRhabdomyosarcomaという奴もいるが、「見つかった時には手遅れ」であることが多く、まず手術適応にはならない。(マニアックすぎで出ないかな?)
4.Metastatic Tumor
転移性腫瘍のなかでもっとも出題されやすいのはズバリ
「renal cell carcinomaのIVC浸潤」であろう。きれいな画像が得やすいし、IVCを腫瘍がズリズリとRAに近づいてくる様は、なかなかスリルがある。その他の組み合わせとしては
SVC-nasopharyngeal ca.
PV-Lung ca.
anterior mediastinal-lypoma, tymoma
Pericardial-Breast ca., Lung ca.
(しかし、ここらへんもオタクすぎて出ないかも?)
以下、まったく試験に出ない話だが・・・
旧ソ連の反体制作家ソルジェニツインの「ガン病棟」には「tumor cordis」という章がある。「余命いくばくも無い患者の悲劇」を描いた章なのだが、いま思えば「単なるLA myxomaじゃん」と思ってしまう・・・本そのものは名作です。とくに、僻地出向中などに読むとしんみりさせられます。
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コメント
お世話になっていますよう。
試験が近づいて焦った心にしみわたる清涼飲料水のような情報です。(変な例え)
このページが無かったら、しょーむない本やDVDを・ポチッ・ポチッ・と幾つも買って積ん読になるところです。
投稿: 日々の雑感 | 2005年9月14日 (水) 21時10分
コメントありがとう。
ご質問や具体的に取り上げて欲しいテーマがあれば、お知らせくださいね。あとわずかですが、頑張ってください。
投稿: clonidine | 2005年9月15日 (木) 00時29分