心臓だけではない(JB-POT直前講座19)
昼間はまだまだ暑いながらも朝夕も過ごしやすくなった今日この頃、今週のあたまぐらいから大血管系の緊急手術が頻発している・・・秋の訪れを実感している・・・
というわけで、TEEで得られる心外の情報についてまとめてみようと思う。数字については、私の個人的な実感(や、個人的に見聞きした値)であり、きちっとした文献的な考察ではないことを踏まえて、参考にしてください。
1.胸水
アメリカ心臓麻酔学会の設定する基本画面に含まれていないせいか、各種の公開講座では軽視される傾向があるが、臨床上は大変重要である。(私はTEEを使用する開心術のほぼ全例でルーチンにチェックしている)。「一見穴が見当たらなくても、TEEで著明な胸腔内の液体を認め、吸引してもらうと200cc以上の血液が貯留していた」といったケースは、JB-POT合格者クラスの麻酔科医ならば一度は経験しているだろう。
下行大動脈があるため、左胸水のほうが右胸水よりも描出しやすい(逆にTEEで右胸水が描出できる=400cc以上の液体が貯留していることを覚悟すべきである)。CABGで内胸動脈を採取した側や、体外循環後に説明のつかないPaO2低下を認めた場合は、特に念入りにチェックする。
画像描出テクニックは簡単である。0度で4chamber-viewを描出した後に、プローベを約120度左もしくは右に廻すだけである。画像問題の際は、扇形の付け根に輪切になった下行大動脈が見えるほうが、左胸腔である。
2.無気肺
胸水を描出するのと同じ画面で無気肺のチェックも可能である。正常な含気の肺組織は白くキラキラした斑のある灰色の組織として描出されるが、無気肺は肝臓のような暗い灰色である。対策としては、教科書のとおり気管内吸引&肺の加圧である。
私は同様の画面で、TEEによって左用ダブルルーメンチューブが右肺に入っているのを発見したことがある。(「その前に、聴診で気付けよ」って・・・ごもっとも・・・)
3.心のう水
心臓をとりかこむ黒いecho free spaceとして描出される。心臓の前面(画面の扇形の下側)が2cm以上あれば、500ml以上の液体の貯留が推定され、心のうドレナージの適応である(あるいは、緊急手術の呼び出しが待っている)。CVPラインがあれば、CV圧上昇で確認できる。
4.IABP
まずはIABPの(ガイドワイヤー)先端が真腔にあることを確認する。(できれば)左鎖骨下動脈より3~5cm程度下方にあることを確認する。左胸水を確認するのと同じ画面で、大動脈内の人工物を探し、鎖骨下動脈が見える位置までプローベを引き抜いて、その引き抜き幅が3-5cmであるとO.K.である。
TEEがない頃は、先端確認のためにいちいちX-pを撮らねばならず、できあがったX-pをとっても反対側の大腿動脈などに迷入していることもまあまああったそうである。また、偽腔に迷入したバルーンを膨らませたら・・・・一巻の終わりである。
5.IVCカニュレーション
脱血管やPCPSカテーテルなどを大腿静脈からカニュレーションすることがたまにある。しかし、大腿からのCVPが腎静脈などに迷入しやすいように、大腿静脈からのガイドワイヤーは迷入しやすい。90度のbi-caval viewでRAの画面左側がIVCであり、ガイドワイヤー先端がそこに到達していることを確認する。正しく挿入されていれば、ワイヤーのみならず、外科操作にともなう気泡の混入も観察できる。
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