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2006年8月13日 (日)

CATCH22 (JB-POT直前講座2006-3)

直接TEEには関係ない話題である。

世間は夏休みらしく、うちの病院でも比較的軽症な幼児~学童の手術が目立つ。
口唇・口蓋裂もそのひとつであるが、担当する研修医をつかまえてはしょっちゅう
「口唇・口蓋裂をみたら、隠れた先天性心疾患を疑え。心電図や胸レントゲンは念入りに観察せよ。」
説教している。研修医連中もきっと「口うるさいオバサン」だと、思っているに違いない。しかし、最近の研修医の傾向のひとつに「指導医の助言をうざったがるが、ネット上の情報は比較的素直に信じる」というのもあると思う。よって、いつか検索してもらえることを祈りつつ、ここに簡単にまとめておこうと思う。


CATCH22

染色体 22 番短腕 の異常、ファロー四徴症などの先天性心疾患を伴うことが多い。
私が国家試験を受験した頃は、DiGeorge症候群と呼ばれていたものが、さらに研究が進んで、呼び名も変わったらしい。

Cardiac defects (心奇形)
Abnormal facies (顔貌異常)
Thymic hypoplasia (胸腺低形成)
Cleft palate (口蓋裂)
Hypocalcemia (低カルシウム血症)

のような、同時に合併する頭文字を取って CATCH22 (キャッチ22)症候群と呼ばれている。


以下は、非医学的トリビアであるので、お暇な方のみどうぞ

「Catch 22」 はもともとジョゼフ・ヘラーによる、第二次世界大戦中の軍隊組織の中の不条理を書いた小説のタイトルであります。例えば、主人公は軍隊からの除隊を求めて自身の精神疾患を主張するのですがどうしてもそれが認められませんでした。軍規によって「精神疾患者は兵役を免除するが、自分で精神疾患者と申し出る者は本当の精神疾患者ではなく正常なので除隊しない。」と判断されてしまったからだそうです。

この小説はベストセラーとなり、「Catch 22 (Situation)」も 「どうにもならない理不尽な状況」を指す英語の慣用句となったそうです(留学先のカンファでも使われていましたっけ)。日本でも某医者作家の書いた「失楽園」という小説がベストセラーになり、「失楽園」という言葉自体も本来の聖書とはかけ離れた状況を指す慣用句となったようなものでしょう。
そして、この小説は、「卒業」 とか 「ワーキングガール」 のマイク・ニコルズ監督によって映画化もされているようです。

最近、病院関係者で話題の「医療崩壊」を読んでます。近年(2004年の新研修医制度発足以降)の、(とりわけ地方)大学病院の現状を予言する名著です。

後期研修医の指導に加え、スーパーローテーターの研修、歯科医師の研修、そしてよりにもよって新制度発足時と同時期に始まった救命救急士の挿管実習(現場の医師にとっては、教えてもまったく将来の戦力にならず、報酬はなし、文書で患者同意をとることが義務づけられ、そこに名前を書いた医師は事故の場合の責任だけとらされる。丁寧に指導すると「大学病院は面倒見がよい」といわれ、予定の3倍ちかい人数が知らない間に押し付けられているという矛盾・・・)

心臓麻酔、小児複雑心奇形、TEE・・・などなど、腕を磨けば磨くほど、リスクの高い症例を担当することになり、報酬は年功序列賃金のまま、夜中や休日の呼び出し回数のみ増えてゆく・・・

まさに「Catch 22」 といいたくなるような状況ではないでしょうか。

今日も午後から、新生児の複雑心奇形の緊急手術のため出勤予定です。

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コメント

はじめまして。女医先生のJB-POT講座が再開されたときいて、やってきました。CATCH22、研修医のときに心外の麻酔をかけました。
そのとき、辞書をひいて先生のかかれたとおりのことが書いてあってへえーって思ったのを覚えています。
今、産休中でJB-POTにチャレンジできるのはずっと先のことになりそうですが、いつかチャレンジしたいと思っています!
先生もたくさんの受験生の味方としてがんばってくださいね!

投稿: runa123 | 2006年8月14日 (月) 10時16分

拝啓:

先生の幾つかの論文の共同著者のM.T.です。
このブログと全く関係ないのですが、先生のご主人は建築士ですよね。ご専門は意匠ですか、構造ですか?実はマイホームの建築を考えており、先日購入した土地の地盤調査を行いましたが、基礎を敷設する前に杭打ちをするか否かで複数の建築士さんの意見が分かれております。先生のご主人はその辺、詳しいですか?また、耐震チェックの精密診断をする前に一般診断のセカンドオピニオンをどなたかにお願いしようと思っているのですが、ご主人は行っていますか?その際の費用等につきましてご教示頂ければ幸いです。

投稿: M.T. | 2006年8月15日 (火) 22時25分

runa123さん、はじめまして

産休中ですか、いいですね~、休めるうちに休んでください。当方は晩婚のため(麻酔科認定医→学位→留学→結婚)、新婚時代はすでに大学病院中間管理職であり、おいそれとは休めない立場でありました。入局者なしの魔の2年間も過ぎ、そろそろ今年こそ・・・

可能ならば、医局で心エコーの機械を借りて、赤ちゃんの像をいろいろ描出してみてはいかがでしょうか?腹部プローべがあればよいのですが、TTEプローべでも結構見えますよ。胎児の心臓が描出できればPFOが開いているのが見えるはずです。今がチャンス!

投稿: clonidine | 2006年8月15日 (火) 23時33分

M.T.さん

おっしゃるとおり、私の亭主は(近年なにかと話題の)一級建築士であります。専門は意匠なので、構造は「シロウトよりは解るが、責任をもって判断できない」そうです(まあ、外科医の脊椎麻酔のようなレベルなのでしょう)。

お尋ねの「マイホームの基礎に杭打ちが必要か否か」ですが、私が亭主の長い話を勝手にまとめると「ラパコレに硬膜外が必要か」のような話みたいです。マイホームが木造なのか鉄筋コンクリート造なのかでも話は変わってくるし、杭打ちをしなくてもベタ基礎で対応する方法もある(硬膜外なしでもフェンタ併用で乗り切る、ようなもの?)そうです。「意見が分かれる」というのは、ある意味「どっちもあり」ではないでしょうか

M.T.さんが「震度5強に耐える家」を建築しても、今後30年間に震度6以上の地震が発生しない保障はどこにもないですから(健康人に硬膜外カテを入れても血腫の可能性がゼロではないように)、どんな専門家もリスクをゼロにすることは不可能であることは、ご承知ください

具体的なセカンドオピニオンの窓口ですが

1.M.T.さんの勤務先大学の工学部建築学科の教授にたずねる
「教授だからといって、有能な実務家であると限らない」そうですが、すくなくともO.B.を紹介してくれるはず

2.日本建築構造技術者協会(http://www.jsca.or.jp)もしくは、その県支部(http://www.toda-arc.co.jp/index6.htm)に問い合わせる

費用・期間については、相談先でお尋ねください

投稿: clonidine | 2006年8月16日 (水) 00時08分

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