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2006年8月

2006年8月15日 (火)

Center line method(JB-POT直前講座2006-4)

今日はお盆のせいか、比較的手術件数も少なく、ひさびさに午後はゆっくり心エコー室にこもることができた。エコー室長でもあるM助教授から、いろいろ試験に有用そうな情報を仕入れてきたので、その一端をご披露しようと思う。

「Center line method」とは、左室局所壁運動異常を定量化する方法の一つである。10年前の「coronary steel」、5年前の「ischemic preconditioning」のように、1980年代には循環器業界ではそれなりに流行った単語らしいが、現在の多くの心エコーの教科書では掲載されていない。しかし、JB-POT出題アウトラインには、なぜか含まれているので、受験予定者ならば勉強してもソンはしないと思う。

Centerline_method

Center line methodは、そもそも心カテ造影における壁運動異常の定量化法であった。拡張期と収縮期の輪郭の中点をつなぎ、その中点をつないだ線を基準線とし、そこからの逸脱や肥厚の程度を100分割してグラフ化することによって評価する方法である(詳しくは図をクリックしてください)。

この方法は収縮期と拡張期の双方で明確な輪郭線を描出していることが前提となる。実際の心エコーは、両端のドロップアウトや乳頭筋と心筋の区別などの問題があり、全例で明瞭に描出することは困難である。(日常臨床では、いわゆる「心眼」でトレースして、なんとかしのいでいるのだが・・・)。ゆえに、Center line methodという用語はいつしか、心エコーの臨床現場からは忘れられていったのだと思う。

しかし、近年の心エコー高級機種のなかには、color kinesis(壁運動異常をカラー変化で表示するもの)モードが備わったものがある。Center line methodはその礎としていまも生きているのだろう。


でも、個人的には出題アウトラインとして取り上げるならば、もっと大事なこともあると思うのですが・・・「胸水の描出法」とかね・・・出題委員のみなさま、そろそろアウトラインも改定してもいい頃なのでは・・・?

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2006年8月13日 (日)

CATCH22 (JB-POT直前講座2006-3)

直接TEEには関係ない話題である。

世間は夏休みらしく、うちの病院でも比較的軽症な幼児~学童の手術が目立つ。
口唇・口蓋裂もそのひとつであるが、担当する研修医をつかまえてはしょっちゅう
「口唇・口蓋裂をみたら、隠れた先天性心疾患を疑え。心電図や胸レントゲンは念入りに観察せよ。」
説教している。研修医連中もきっと「口うるさいオバサン」だと、思っているに違いない。しかし、最近の研修医の傾向のひとつに「指導医の助言をうざったがるが、ネット上の情報は比較的素直に信じる」というのもあると思う。よって、いつか検索してもらえることを祈りつつ、ここに簡単にまとめておこうと思う。


CATCH22

染色体 22 番短腕 の異常、ファロー四徴症などの先天性心疾患を伴うことが多い。
私が国家試験を受験した頃は、DiGeorge症候群と呼ばれていたものが、さらに研究が進んで、呼び名も変わったらしい。

Cardiac defects (心奇形)
Abnormal facies (顔貌異常)
Thymic hypoplasia (胸腺低形成)
Cleft palate (口蓋裂)
Hypocalcemia (低カルシウム血症)

のような、同時に合併する頭文字を取って CATCH22 (キャッチ22)症候群と呼ばれている。


以下は、非医学的トリビアであるので、お暇な方のみどうぞ

「Catch 22」 はもともとジョゼフ・ヘラーによる、第二次世界大戦中の軍隊組織の中の不条理を書いた小説のタイトルであります。例えば、主人公は軍隊からの除隊を求めて自身の精神疾患を主張するのですがどうしてもそれが認められませんでした。軍規によって「精神疾患者は兵役を免除するが、自分で精神疾患者と申し出る者は本当の精神疾患者ではなく正常なので除隊しない。」と判断されてしまったからだそうです。

この小説はベストセラーとなり、「Catch 22 (Situation)」も 「どうにもならない理不尽な状況」を指す英語の慣用句となったそうです(留学先のカンファでも使われていましたっけ)。日本でも某医者作家の書いた「失楽園」という小説がベストセラーになり、「失楽園」という言葉自体も本来の聖書とはかけ離れた状況を指す慣用句となったようなものでしょう。
そして、この小説は、「卒業」 とか 「ワーキングガール」 のマイク・ニコルズ監督によって映画化もされているようです。

最近、病院関係者で話題の「医療崩壊」を読んでます。近年(2004年の新研修医制度発足以降)の、(とりわけ地方)大学病院の現状を予言する名著です。

後期研修医の指導に加え、スーパーローテーターの研修、歯科医師の研修、そしてよりにもよって新制度発足時と同時期に始まった救命救急士の挿管実習(現場の医師にとっては、教えてもまったく将来の戦力にならず、報酬はなし、文書で患者同意をとることが義務づけられ、そこに名前を書いた医師は事故の場合の責任だけとらされる。丁寧に指導すると「大学病院は面倒見がよい」といわれ、予定の3倍ちかい人数が知らない間に押し付けられているという矛盾・・・)

心臓麻酔、小児複雑心奇形、TEE・・・などなど、腕を磨けば磨くほど、リスクの高い症例を担当することになり、報酬は年功序列賃金のまま、夜中や休日の呼び出し回数のみ増えてゆく・・・

まさに「Catch 22」 といいたくなるような状況ではないでしょうか。

今日も午後から、新生児の複雑心奇形の緊急手術のため出勤予定です。

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2006年8月12日 (土)

コンコルドよりも早く(JB-POT直前講座2006-2)

日常臨床で、「3.5メガ」だの「5メガ」だのいってプローべを使い分けている方も多いと思いますが、「5メガ」のプローべの出している超音波の波長はどのぐらいの長さかご存知でしょうか?

「音の速さ=1マッハ=340m/s」で
「5メガ=5000000ヘルツ」だから
「5メガの波長=340m÷5,000,000=0.078mm」と思った方
              
      ハズレです、残念・・・

というのも、超音波診断装置はこの水中の音波の反射を測定することによって成立している訳ですが、音は水中では約1500m/sの速さで進みます。一方、1マッハ=340m/sというのは、音が空気中を伝わる速度ですので、この両者を混同しないようにしてください。

「5メガの波長=1,500m÷5,000,000=0.3mm」が、正解です

超音速旅客機のコンコルドは2,000km/h(≒590m/s)で進むそうですが、TEEプローべの出す超音波がぜんぜんヨユウで早いことになります。ちなみに、普通の旅客機はせいぜい250m/sぐらいだそうです。

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2006年8月11日 (金)

直前講座ふたたび(JB-POT直前講座2006-1)

7月下旬、TEE業界の関係者にはちょっとしたイベントがある。PTEeXAM; 米国の周術期TEE専門医資格試験(詳しく知りたい方はこちら)が発表される。ホームページによる発表なので、世界中から閲覧可能である。ちなみに、2006年度の8名の新規合格者を加えると、日本在住PTEeXAM合格者は合計31名となった。個人的には、秋の臨床麻酔学会を控えたせいか、旭川在住者の活躍が目立ったように思う。

TEE業界で、PTEeXAM合格発表の次のイベントといえば秋の心臓血管麻酔学会およびJB-POTであろう。昨年の、わがブログは受験勉強中の若手麻酔科医のみならず、「学会セミナー」から「2ちゃんねる」まで広く引用され、光栄のいたりである。私は基本的にはぐうたらな人間だが、おだてられると調子に乗り易い人間でもあるので、ふたたびBlogによる直前講座を再開してみようとおもう。

あれから1年、私は病院に念願のマルチプレーンTEEを購入してもらった(というか、2005年の時点でPTEeXAM合格者でバイプレーンを常用している麻酔科医はきっと日本でただ一人、世界的にもかなり稀な現象だったと思う)。その代償(?)として、あいもかわらず、オールナイトで心臓移植やら補助人工心臓の麻酔にはげんでいる。時々、試験に関係ない愚痴もとびだすと予想されるが、(新研修医制度でなにかと冷や飯をくわされている)地方大学病院の中堅スタッフの実情も併せて供覧できればと思う。

また、コメント・質問メールは大歓迎である。

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