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2006年9月11日 (月)

Swan-Ganz挿入困難(JB-POT直前講座2006-8)

TR,PHを術前より指摘されている症例では、しばしばSwan-Ganzカテーテルが挿入困難である。SGカテの挿入困難な場合、教科書的には放射線ガイド下の挿入が勧められるが、TEEガイド下の挿入もなかなか有用である(というか、私はこれしか知らない)。TEEでカテーテルが進むべき方向の見当をつけ、同時に弁の開閉するリズムをつかみ、カテーテルを挿入するタイミングをつかむ。具体的な手順は以下のとおりである。

まず、気管内挿管が終わったら、TEEプローべを挿入しておき、内頚静脈への清潔操作をはじめる。

A.刺入部からRAまで

90度のbi-caval viewで画面右側に見えるのがSVCである。カテーテルを15cm程度進めれば、右側から線状の人工が見えるはず。バルーンを膨らませれば先端がわかりやすいが、同時にバルーンの両サイドに弧状のアーチファクト(Side Lobe)が出現するので、カテーテルのワイヤー部と混同しないようにする必要がある。Side Lobeはエコー画面の扇形の縁と同心円状に出現するので、注意深く観察すれば区別できる。

B.T弁を突破(RAからRV)

TRのある症例では第一関門である。45度でA弁がベンツのマークように描出できる画面を探すと、同時にA弁の9時方向にRA、6時方向にRV、3時方向にPAが描出できるはずである。心電図の同期音のリズムを頭の片隅で刻みながら、画面でTが開くタイミングを確認し、T弁が開いた隙に5cm程度ずつカテーテルを進める。RA内に明らかにループが見えるようならば、バルーンを萎ませてループが消失するまでカテを引き戻す。

C.P弁を突破(RVからPA)

Bと同様の画面で、心電図の同期音のリズムを参考にP弁が開くタイミング(P弁が描出困難ならばA弁の開くタイミングにあわせる)をつかみ、5cm程度ずつカテーテルを進める。教科書的には「バルーンを楔入させ、PCWPを確認せよ」とあるが、PHや低心機能の症例ではしばしばバルーンは楔入しない。やみくもにPCWPを追求することは、しばしばカテーテルの肺動脈への穿孔をまねきやすい。

D.左右肺動脈への選択的挿入

上部食道で0度のまま軽くUpをかけると、主肺動脈+右肺動脈+左肺動脈の基部が描出できる。左肺動脈のほとんどは気管の影になるため、TEEでは描出できない(Blind Zoneと呼ばれる)。SGカテは、自然な屈曲があるため、約9割の症例では右肺動脈に流れ着く。右肺全摘など、左肺動脈へのSGカテ挿入が必要な場合には、上記の画面を出しながら、カテにトルクをかけながら進める。


忘れてはならないのは、SGカテの挿入は手段であって目的でなはい。SGカテ挿入に夢中になるあまり、その間に「点滴が全開になっており、心不全患者に急速輸液がされていた」といった事態は、ありがちだが、あってはならないことなのである。「20分以内」などと時間を決めて、それまでにSGカテを肺動脈まで進められなかったならば、スリーブを着せていったん撤退し、体位を整え、外科医が手洗いに行っている間に再挑戦すればいいのである。


また、SGカテの2大合併症は肺動脈穿孔とカテーテル縫込である。

肺動脈穿孔:穿孔が疑われたならば、基本的にはカテーテルを抜いてはいけない。カテーテルがあることで穴からの出血がおさまっていることがあるからである。盲目的にカテーテルを抜いたならば、一気にに出血し、同時に出血点を見失うおそれがある。

カテーテル縫込:SGカテを使用した症例では、閉胸時にカテーテルを5cm程度ひっぱって、カテーテルが動くことを確認しておく。動かない場合には(退室前に)大声で騒ぐ。一回これを見つけると、どんなに横柄な心臓外科医でも、その後しばらくはおとなしくなる(はずである)・・・

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コメント

>つついさま
初めまして。先日はchony-yasu様のブログで職場をご紹介頂きありがとうございました。私は現在、駿河国の某こども病院で心臓外科研修を行っております。初期研修は九州厚生年金病院で行い、
現在卒後3年目です。先天性心臓外科に興味があり、現在の職場に飛び込みましたが、外科手技が未熟なために、一から外科の基本を習得するために、現在来年度の職場を探しております。
先生の働かれている病院も魅力的ではございますが、私は大学気質が苦手でございます。それ故、先生の病院と同じ県にございます、心臓外科手術の多い某医療センターでの研修をためらっているところでございます。先生がブログ上でのやりとりながら、私の進路に対して真剣にアドバイスをしてくださり、本当にありがとうございました。

投稿: のーうっど | 2006年9月14日 (木) 23時10分

のーうっど さま

「大学気質が苦手」ということですが、

A.教授を頂点としたピラミッド組織が苦手
B.封建的な上下関係が苦手
C.臨床より研究優先なのが肌にあわない
D.雑用が多い

といったところでしょうか。

A.B.ですが、ご存知のとおり心臓外科は一人前になるには最低10年は修行に明け暮れる毎日です。そして修行期間中には、一般病院でも「外科部長の指示には絶対服従」「研究会帰りには部長の好きなキャバクラによるのが必須」・・・なんて病院はまだまだあります。私も市中病院研修中に、部長の好きなホステスのいるクラブに同行したり、(妻帯者の)先輩に浮気中のアリバイ作りを命じられた経験があります。どう考えても業務に関係ありませんが、市中病院ほど科の人数が少ないため、下手に上司の機嫌を損ねると、後でつらい思いをすることが多く、引き受けざるを得なかったのです。

C.ですが、私はあまり学生時代勉強家ではなかったのですが、入局2年ごろから先輩の実験を手伝うようになり、大学講師となった今では年に英文論文1本は発表するまでになりました。「英文なんか読んでるヒマがあれば寝たい」というのが、多くの外科系レジデントの本音でしょうが、今思えば20代の頃に抄読会や学会発表前にあわてて読んだ論文が卒後6~10年目ぐらいの飛躍の基礎になったような気がします。一方、臨床オンリーの医者は5年目ぐらいまでは促成栽培なのですが、10年後あたりになると「応用が利かず、深みが足りない」タイプが多いような気がします。(そして、先天性心奇形なんて、毎日応用問題をやってるようなもんです。)

ゆえに私は、臨床医にとって研究を「一生やれ」とは申しませんが「一生に一度ぐらいはやってみたら」とは思っています。

D.雑用についてですが、上司や先輩に恵まれなければ、雑用地獄におちいる危険性はどこの病院でも十分あります。

投稿: つつい | 2006年9月16日 (土) 01時35分

逆に、大学で研修するメリットは何なのでしょうか?
私が思うに

E.指導医・研修医とも人数やタイプが多い

「研究しか興味のない教授」の影にはたいてい「出身大学はぱっとしないが手術の上手い講師」とか「人望があり研修医の相談相手になってくれる助手」みたいな指導医がいます。また「趣味とバイトに生きる万年助手」とか「講師夫人の週1回だけ出勤する研究生女医」といった、大学病院にしか生息しないタイプの医者もいます。そして、このユニークな先輩たちそのものが生きた教材でもあります。

一般病院では、科長や先輩とそりが合わなければかなりつらい一年を送ることになります。大学病院ならば「いい人ばかり」とはいいませんが、波長のあう先輩が1~2人は見つかるものです。「イヤな先輩」にあたっても、研修医仲間で愚痴をこぼしてやり過ごすこともできます。雑用地獄に陥っても20代のうちならば、「一般病院で毎日8時まで1人で残業」よりも「大学病院で同期3人と10時まで残業」のほうが耐えられるものです。

F.次のステップへの選択肢が多い

留学、学位、大学院といった選択肢は圧倒的に大学病院が有利です。一般病院に就職するとしても、「自分の希望に近いポストが空くまで様子をみる」とか「狙った病院の情報を集める」といった行為は、大学病院が有利であります。

G.上下関係が濃い

よくも悪くも日本の(外科系)医局は体育会的で人間関係が濃いところであります。うっとうしいことも多いのですが、3年後・5年後を見据えたアドバイスが可能でもあります。

一方、近年のスーパーローテート制は「深い人間関係を作る前に次の部署へ行ってしまう」印象があります。よって「あまり深刻な上下関係のトラブルは少ないが、真剣に将来を心配してくれることもない」のでしょう。

どちらが、最終的に研修医のためになるのか、私にはわかりません。

私の個人的な意見でありますが、日本国内で臨床医になりたいならば、(うちの病院には限りませんが)大学病院への入局は、「一生やれ」とは申しませんが「一生に一度ぐらいはやってみたら」とは思っています。

ではまた、ご近所になったらよろしくお願いします

投稿: つつい | 2006年9月16日 (土) 02時06分

>つついさま

丁寧なアドバイスありがとうございます。
私自身は現在も大学に属するのか、
もう少し市中病院で臨床するのかで
迷っているのが本音でございます。
ただ入局は必要であると考えております。

初期臨床研修~後期臨床研修という流れの中で、
卒後5年目までは自分の自由が尊重されていると
考えておりますが、その後の人生展開が全く不透明です。
それならば早く大学に属せば良いのですが、
今度は自分の自由が剥奪される気がします。

大学での研修は、
その分野の先輩たちが大勢集う環境の中での研修ですので、
自分の将来に向けて勉強になることばかりだとは思います。
ただ市中病院でのポリクリの際に
「えっ?この人、大学で講師してたし、専門医持ってるのに
何やこのへたくそ手術!!」という現実を知ったのも事実です。

現在も、腕と将来の狭間で揺れ動いております。

投稿: のーうっど | 2006年9月16日 (土) 11時30分

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