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2006年9月 9日 (土)

Swan-GanzとTEE(JB-POT直前講座2006-7)

先日、ひさびさにSwan-Ganzカテーテルを挿入した。よく考えたら、2006年の初Swan-Ganzだった。うちの大学では、10年前から開心術の全例(含む小児)でTEEを使用している一方で、2006年現在開心術の95%以上の症例ではSGカテを使用していない。というのも

「術中にSwan-Ganzカテーテルで得られる情報のほとんどはTEEで得られる」というのが当院のモットーである。個人的にも「TEEとSGから得られるデータの量と質は、テレビとラジオぐらい違う」と思っている。よって「ラジオニュースをテレビで確認することはあっても、その逆はまず不要」だと考えている。


具体的には

 A.PA圧→TRより簡易ベルヌーイの式から算出する

 B.Cardiac Output (Cardiac Index)→TEEよりStroke Volumeを算出しHRを乗じて算出(さらに体表面積で補正)

 C.PCWP
PCWPそのものは直接TEEでは算出できない。しかしPCWPが臨床的重要なのは、(PCWP≒LAPであり)LAPは左心機能の前負荷の指標となるからである(CVPが右心機能の指標であるように)。前負荷の指標ならば、LVEDV:LV end-diastolic volumeが(もっと簡潔にはDs: diameter of systoleが)TEEによって測定可能である。

よって、麻酔科医が術中に前負荷の指標が必要ならば、LV短軸像で収縮期の直径を観察し、その推移を把握しておけば臨床的には十分だとおもう。そしてLVEDVやDsはTEEを挿入できる症例ならば、ほぼ全例で測定可能である。

一方SGカテのPCWPは、肺高血圧や心不全症例ではしばしばバルーンが楔入しない。臨床的に前負荷の指標が欲しい重症例において、えてしてデータが得られないというジレンマがある。

 D.SvO2(混合静脈血酸素飽和度)
SvO2はTEEでは測定できない。しかし、開心術や(SGカテの挿入が検討されるような)重症心不全ならばCVPカテーテルはまず挿入されているので、そこから採血した血液のSaO2を測定すれば概算値は推定できる。SVC=上半身の静脈血になるので厳密には混合静脈血ではないが、臨床的には十分だとおもう。近年では各種の測定機能をそなえたCVPカテーテルも開発されており、SGの必要性というのはますます薄れているようにおもう。

SGはたまには心臓に縫い付けられたり(先々月に某大学付属病院で、縫い付けられたSGカテを無理やり抜去して患者死亡を招き、お約束の白衣の謝罪記者会見がTVで報道された)、肺動脈を突き破ったりすることもある。一方、TEEプローべにはまずその心配はない。外国ではTEEプローべによる食道穿孔の症例報告もあるが、多くはP・・・・社やA・・・・・社のような外資系メーカーの武骨なプローべによるもので、アロカや東芝といった国産メーカーの華奢なプローべによる穿孔の報告は、私はまだ知らない。

しかしながら、当院でもたまにはSGカテを使用している。
SGカテの長所は何だろうか。

 E.ペーシング機能が付加できる

SGカテにはペーシングリードを備え、一時的ペースメーカーとして使用できるものが販売されており、治療手段としても使用可能な種類がある。TEEは基本的には診断しかできない。文献的には食道ペーシング機能をそなえたTEEプローべの研究報告はあるが、私自身は見たことがなく、実用化にはまだまだ時間がかかりそうである。

 F.術後管理など中長期のトレンドを観察
「TEEとSGは、テレビとラジオぐらい違う」と先にのべたが、現代でもラジオの需要がまったく無くなった訳ではない。情報量が少ないからこそ、カーラジオのように「ラジオを聴きながら運転」といった他の操作が可能なのである。術後にICUで、「他の患者の処置をしながらさりげなく心機能のトレンドを観察する」という技は、TEEでは困難である。

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