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2008年7月

2008年7月17日 (木)

S席で聴いた、ベルリンフィル12人のチェリストたち

フリーランス麻酔科医になって嬉しいことの1つは、コンサートのS席を杞憂なく購入できることである。大学病院勤務医時代は、日曜日のコンサートといえど約3割の率で呼び出されるリスクがつきまとい、その場合の心理的ダメージを最小限にするために、E席やらP席ばかり購入していたのだ(むろん、大学病院の薄給ぶりも、その理由には含まれる)。

7月13日(日)、サントリーホールで「ベルリンフィル12人のチェリストたち」のコンサートを聴いた。この演奏家集団のコンサートを聴くのは4度目であるが、S席で聴くのははじめてである。6列目左側なので、第1~3チェリストの運指がよく見える。ファースト・チェリストであるルートウィヒ・クワントは、常に親指を出しっぱなしのハイ・ポジションを駆使しながらも豊潤なメロディでアンサンブルをまとめ上げていた。セカンド・チェリストは、若手を起用していた。「テクニックは天才的だが、豊潤な音楽を創るにはまだ若く、自分の傍において指導」していたのだろうか。外科医や麻酔科医が手術中にしか指導できないことがあるように、音楽家にもステージの上でしか指導できないことがあるはずだから。

前半が終わって休憩時間中、左側の二階席がなんだか騒がしい。カメラマンやTVクルーがドヤドヤ集まっている。「サミット帰りの外国要人かな?」と思いきや、2階バルコニー席に登場したのは天皇・皇后両陛下であった。私の席からは、前髪のウエーブもはっきりとわかる至近距離であった。誰に促されることもないのに、聴衆は自然と立ち上がり、拍手で迎えた。

後半のプログラムのためにステージに現れた12人は、両陛下に一礼したのち客席に一礼し、演奏を開始した。クワントらベテラン勢は、おそらく王室関係の御前演奏経験も豊富なのであろう、前半と変わらぬ演奏ぶりであったが、若手メンバーはなんだかソワソワしており、2階席をチラチラみたりする場面もあった(が、音には全く影響がない、さすがベルリン・フィル)。

アンコールの2曲目「Next music is dedicate for Her Majesty the Empress Michiko・・・」と、クワントは最上級尊敬語で美智子皇后陛下に捧げるアンコール曲(クネフ:わたしに赤いバラの雨が降るはずなのに)を紹介する。次いで、天皇陛下への献上曲(荒城の月)を演奏し、コンサートは終了した。

聴衆は、退場するメンバーへの拍手喝采ののち、退場する両陛下を拍手で送った。ハイヒールを履いていたのか階段で少しよろけた皇后陛下に、さりげなく手を貸した天皇陛下の後姿が印象的に残った。

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