2008年11月23日 (日)

「風のガーデン」にも異議あり!

今年の秋は、やたらと麻酔科医が登場するドラマが多い。「チーム・バチスタの栄光」を取り上げたならば「風のガーデン」も検討すべきだろう。富良野を舞台に、中井貴一が余命いくばくもない麻酔科医を演じている。アメリカでエコーの勉強をしてきたそうで、趣味はチェロで学生時代はオーケストラに所属していたそうな・・・ここらへんは管理人としては他人事とは思えない設定である。

A医大および麻酔科I崎教授が監修しているそうだが、中井貴一の各種医療器具のさばき方はアラがない。また、この麻酔科医は仕事ができるだけでなく、女にも大変モテルようである。院内の看護部には元愛人がおり、行きつけのバーには若い恋人がいる。多忙な麻酔科准教授は仕事とデートを兼ねて学会旅行に若い恋人を同伴するが、同業者にバレないように恋人は別のホテルを予約して、同級生との話が終わるまで待機させたりする。ここらへんの手口も、A医大&I崎教授の指導なのだろうか。

一介のチェロ弾きとしては「あんな狭いキャンピングカーでチェロが弾けるか」とか「夜中に過去を悔いて1人でチェロを弾くんだったら、バッハの無伴奏あたりじゃないか」などなど、ドラマの設定についていろいろ言いたい事はあるが、もっとも不自然に思うのは

この麻酔科医をめぐって、オケ関係の女が登場しない」ことである。

この麻酔科医は女にだらしなく、高校時代から同級生にちょっかいを出し、医者になってからも同僚の妻には手を出したりする。どうやら「港々に女あり」というタイプらしい。また、アマオケという場所は(とくに大学オケは)ひっついた離れたの激しい場所である。この手の男が、血気盛んな医大生時代に親元を離れてアマオケなんてやってたら、修羅場の1つや2つは作っていたに違いないと確信している。

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2008年11月19日 (水)

「チーム・バチスタの栄光」に異議あり!その方法では死にません(ネタバレ含)

この記事は、ミステリーの結末を知りたくない方は読まないでください。


チーム・バチスタの栄光」というミステリー小説がある。昨年映画化され、現在ではテレビドラマ放映中である。一昔前の医療ドラマの「外科医のみがひたすらかっこいい」ストーリーではなく、心臓手術を題材に麻酔科医・病理医・臨床工学士・器械出しナースなどのメンバーが重要な役割を持って登場する。


原作小説中の犯人は麻酔科医だった。麻酔科医は病院内での麻酔科医の扱いに不満を蓄積させていた。麻酔科医は硬膜外カテーテルを背中から脳に挿入し、手術中にこっそり薬液を注入した。患者の脳細胞はダメージを受け、手術中に心停止させた心臓は人工心肺離脱後も再鼓動しなかった・・・

しかし、ほとんどの麻酔科医は「この方法は使えない」と気付いたであろう。というのも

1.硬膜外カテーテルは首より上まで到達させるには短すぎる。
2.さらに柔らかく、思った方向に直進しにくい。
3.硬膜外腔は脳幹部と連続しておらず、首より上に挿入するには硬膜を破らなければならない。
4.そもそも、心臓手術では原則として硬膜外カテーテルは使用しない。

さらに、

5.仮に、脳細胞がダメージを受けても、しばらく心臓は拍動する(脳死でも心拍はしばらく持続するようなものである)。ゆえに、このケースでは人工心肺離脱後に再鼓動する(が、ICUでいつまでたっても患者の意識が戻らないことで異常に気付くはず)。

6.仮に、再鼓動しなくても、その場合は再び人工心肺に戻れば、大騒ぎする必要はない。PCPSを装着すればICUに帰室できる程度の時間は稼げるので、手術室内で死亡することは、まずありえない。


今回のテレビドラマ編では、「原作とは犯人が違うらしい・・・」とのことだったが、11月18日放映分では、麻酔科医が犯人だった。しかし、1~4の疑問はクリアされていた。麻酔科医は硬膜外カテーテルではなく、肺動脈カテーテルを使用していた。肺動脈カテーテルならば、ほとんどの成人心臓麻酔で使用されているので、バチスタ手術で麻酔科医が使用しても不自然ではない。また、肺動脈カテーテルを右房・右室に挿入するのは通常の使用法なので、周囲も疑問には思わないだろう。

犯人は、肺動脈カテーテルに強い電流を流して、右房・右室にダメージを与えたため、心臓は二度と動かなくなった・・・とのことで、多くの麻酔科医は「これだったらできるかも」と思ったかもしれない。


しかし、私は「やっぱり、この方法は使えない」と思う。というのも

7.心臓手術中は(というか、ほとんどの手術中は)心電図がモニターされているので、心臓を破壊するような高圧電流が流れたら記録に残ってしまう。

8.バチスタ手術は拡張性心筋症に対する手術である。そして、拡張性心筋症の右房・右室の内腔は拡張しているので、カテーテルと心筋壁が接触しにくい(ゆえに、肺動脈カテーテルにはペーシング機能のついたものもあるが、心不全で拡張した心臓ではペーシングが脱落しやすいというジレンマがある)。ゆえに、電流を流しても一撃必殺とはいかないであろう。何度も繰り返すと、壁の薄い肺動脈部分が先に損傷してしまい、「何か変だぞ」と心臓外科医にばれてしまいかねない。


じゃあ、どうすればいいのかというと

9.肺動脈カテーテルはしばしば、逆行性心筋保護液注入ラインの圧モニターのために、その側管と接続されることがある。このラインを使用するのである。たとえば、このラインから蒸留水を注入すれば、外科医に気付かれずに冠静脈洞から静脈を通じて電解質差によって心筋にダメージを与えることができる(心筋保護液と水を間違えた医療事故の報告もある)。水ならば簡単に入手できるし、警察の鑑識調査でも検出されることはないはずである。

ただし、よい麻酔科医のみなさんは、けして真似しないでください。

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