2010年4月 1日 (木)

限界医局その後

限界医局に登場したC先生とF先生は、無事に転職を完了したそうである。

彼等の前途に幸多かれと祈りつつ・・・

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2010年2月19日 (金)

現役生命

その日の担当は待機的なoff pump CABGであった。心機能も比較的良好で心臓麻酔としての難易度は特に高いものではないが、最大の問題は体重140Kg(身長170cm)であった。

挿管はクリアできた。Aラインは触れやすく、難なく確保できた。続いてCVおよびSGカテーテルを挿入すべく、大量の肩枕を入れて、猪首を伸展させるようにガムテープで額を手術台に固定した。

いざ刺そう!と構えていると
「オレがやる!」とIIIa部長が登場した。
「え~」と私は一応抵抗するが
「なんかあったら責任問題になるからオレがやる!」とIIIa部長は主張、目がマジである。
手術室の空気を読むのもフリーランスの任務、無駄な抵抗は止めて部長へ場所を譲る。

140KgということでIIIa部長にしては手間取ったが数度の穿刺で難なくガイドワイヤーは挿入され、カテーテルは合併症もなく留置された。
「SGカテーテル留置患者の体重上限記録が更新できたぞ!ハッハッハ、後はやっといてくれ」上機嫌でIIIa部長は去って行った。
「責任うんぬん」というより、要は自分でやりたかったようだ。

私はなんだかイチゴだけ食べられた後のショートケーキをもらった気分であった。
と同時に、いかにしてアラカン(=around還暦)麻酔科医が現役生命を延長するために努力(というか本能的習性)しているかを知った。

オリンピックシーズンである。プルシェンコ選手の銀メダル演技などを観るにつけ
「私もいつまで、現役第一線で重症やら緊急症例に対応できるだろう」とぼんやりと考えている。
「せいぜい後7~8年ぐらいかなあ」と弱気になるときもあるが、
「IIIa部長ぐらいの勢いで若いモンの症例を取り上げていれば、もっと延長できるかも」とも考えている。

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2008年9月21日 (日)

心疾患合併非心臓手術におけるTEE(学会おまけ)

おかげさまで、学会の教育講演は無事に終了しました。台風もどこかへ去ったようだし。
何が大変って、副都心線の渋谷駅のホームから地上に出るのに10分以上かかってしまい、学会場にたどり着けないんじゃないかとパニックになりそうでした。
でもって、時間の関係であまり説明できなかった事項を補足しておきます。

症例は、
「狭心症の既往がありステント留置後の低位前方切除術」であったが、
「周術期のモニターとしてのTEE」について追加説明しておきます。


1.EF:カテコラミン使用の指標

左室駆出率を測定することで、「カテコラミンを使用するか否か」「カテコラミン量の調節」「カテコラミンが多すぎて心臓が無駄に仕事をさせられている」を判断することができます。EFの測定方法としては、壁運動異常がある場合にはM-modeでは誤差が大きいので、少なくともArea法、できればSimpson法での測定が望ましいです。

心疾患合併症例の術前カンファで最も話題になりやすい計測値がEFですが、EFとは通常LVEFの略であり、心臓の4つの部屋のうちのLV(もっとも大切な部屋ですが)の収縮能の指標でしかありません。EFは心機能の全てを代表する値ではありませんし「非発作時には心エコー上異常のない狭心症患者」というのはゴロゴロいます。「EF70%」と言われても安全が保証される訳ではありませんし、「EF35%」でもLAD梗塞後の心臓をM-modeで測定した値だったら、さほど騒ぐ必要はないのかもしれません。


2.LVDd/LVEDV:Volume管理の指標

 LVの直径や容積、そしてその推移を測定することで、Volume管理の指標とすることができます。「CVPの値を参考にVolume管理を行う」に近い感覚です。

3.DT、E/A ratio:NTG、ニコランジルの指標

 左室拡張能を数値化することによって、NTG、ニコランジルの有効性を確認することができます。NTGやニコランジル投与を開始すると、トゲトゲしかったE/A波がなだらかになるのを見ると、ちょっとうれしくなります。


4.LAAの血栓・モヤモヤエコーの描出

 心疾患合併症例では、周術期の抗凝固薬の管理は麻酔科医の悩みのタネであります。あんまり出くわしたくないシチュエーションですが、術前に抗凝固療法を中断・変更した症例では、左室(とくに左心耳)に血栓がみつかることがあります。左心耳は血栓の好発部位ですが、経胸壁エコーでは観察がむづかしく、「TEEを入れてびっくり!」ということがたまにあります。


5.肺塞栓:右心系拡大+TR

 これもあまり出くわしたくないシチュエーションですが、術中の肺塞栓が即時に診断できます。血栓が直接エコーで見れる場合もありますが(この場合の致死率は高い!)、血栓が小さくても二次的な右心負荷(=RA,RVの拡大およびTR)によって、診断することが可能です。


6.TEE初心者のトレーニング

 TEEといえば「心臓麻酔のおまけ」と考えられやすいのですが、心臓麻酔初心者は麻酔そのもので手が一杯になりやすく、TEEを操作する余裕がないことが多いです。こういった、心疾患合併非心臓手術で積極的にTEEを使用し、麻酔の合間に操作の練習をすることは、麻酔科医にとっても有意義なことだと思います。


7.臨床研究テーマとして(追加)

 欧米に比べて日本の病院が集約化されていないことは広く知られています。「開心術が年2~3000件(もしくは0件)」というのは欧米では当たり前のことですが、わが国では「年50~200件が乱立」しています。よって、心臓麻酔の臨床研究をデザインしようにも、統計的な有為差が出るだけのデータを集めることは困難です。
 だからといって、「日本ではTEEを使った臨床研究はできない」と決め付けるのは早計です。欧米では、麻酔科サブスペシャリティの分化が進み、「心臓麻酔部門」と「ペイン部門」だとあたかも別の科ぐらい交流がない場合が多いのです。一方、わが国の麻酔科医はいまだに「何でも屋」であることが要求されます。ゆえに「硬膜外麻酔がLV拡張能を改善するか?」といったサブスペシャリティを超えた研究の立案・実行は、我が国の麻酔科医のほうが有利だと私は思います。
 「ウチの病院じゃ、開心術は週1回しかないから、マトモな研究はムリだ」と考える医師よりも「ウチの病院じゃ、週4日はTEEが自由に使えるから、なんか研究してみよう」と考える医師に、研究の女神は微笑んでくれるのではないでしょうか。

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2008年9月17日 (水)

学会の教育公演にコメンテーターとして出演します

きたる9月20日、第48回日本麻酔科学会 関東甲信越・東京部会
『教育講演Q&Aセッション』にコメンテーターとして出演します。
内容は、「非心臓手術における心疾患への対応」になる予定です。

ご興味のある方は、渋谷セルリアンタワーホテル第2会場(宙)へ13:30~15:30おいでください。
(台風に直撃されそうなのが、とっても心配・・・)

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2007年7月 6日 (金)

LVAS装着術の麻酔

先ほど、携帯に旧知(窮地?)の麻酔科医A氏より電話があった。

「明日の7:30から、DCM(拡張性心筋症)の患者にLVAS(補助人工心臓)を装着することになったんだけど、うちの病院の麻酔科医はだれもLVASなんて見たことないんです・・(中略)・・どうやって麻酔すればいいんですかねえ?」

簡単に電話でLVAS装着術の要点を説明したのち、「ほかに準備するものはないですかねえ?」と言ってるので、「じゃあ、明日7:30までに要点をブログに載せとくから、今日は早く寝て鋭気を養っときなさい。」と答えた。でもって、この章を書いている。


1.手術室入室の前に ・・・身軽がトラプルを防ぐ・・・

LVAS装着術の対象は「LVASを装着しなければ、明日の命も保障できない、超重症心不全」である。術前の段階で、ICUに入室し、すでに挿管、Aライン、CVP、Swan-Ganzのフルコースが終了しており、さらには両方の大腿からIABPやPCPSが装着されていることが多い。さらには、各種薬物のシリンジポンプがクリスマスツリーのごとく並んでいるので、気の弱い麻酔科医ならば、見ただけで逃げ出したくなるような状態であることが多い。

ここであせってはいけない。シリンジポンプの内容をよく吟味してみよう。カリウム、抗生剤、インスリンといった、「当面の支障のない薬品は可能な限り中断」するのが望ましい。「ヘパリンは入室時に中止」する予定ならば、病棟を出る段階で中止にしてポンプははずしておく。点滴ライン類も、「とりあえず生食でキープ中」のものは、ヘパリン生食でロックしておき、スパゲティ状態の改善に努めるべきである。整理すれば、手術室入室前に、点滴やシリンジポンプの数は、半分以下に減らせることが多い。また、このライン整理は、主麻酔科医が中心に行うのが望ましい。整理しながら、どのラインがどこに入っているかを把握することができるからである。抗生剤はICUを出る前に終了するか、手術室入室後に落ち着いてから開始すべきである。

こういう超重症例では、カテコラミンの三活トラブルだけで、あっという間にGame Overになりうる。患者移動や入室の前後は、多数の人間が関与するし、その中には超重症例の扱いに慣れていない人間も含まれる。トラブルを防ぐ方法として、管理するラインや薬品の数を、あらかじめ減らしておくことをお勧めする。

また、IABPの同期がECGに依存している場合、新人看護師などが気軽に電極をはがそうとするのをしばしば目撃するが、けっしてはがされないよう目を光らせなければならない。


2.人工心肺までにすべきこと

PCPSが装着されている場合の麻酔導入は、一般的な心臓外科手術よりもずっと簡単だと思う。麻酔薬の影響で患者の心機能や低下しても、機械が助けてくれるからである。末梢血管の拡張によって、急激な血圧下降が見られる場合もあるが、大抵はネオシネジンやノルアドレナリンなどで、SVRを上げれば回復する。「早期抜管」など誰も要求しないので、心ゆくまで大量の麻薬や筋弛緩薬を使おう。

忘れてならないのは、TEEによるPFOの確認である。PFOは開いたままだとLVAS循環が成立しない。一見シャントがなさそうに見えても、バルサルバ動作や発泡コントラスト剤(アルブミンを少量加えた生食を泡立てても代用できる)で、念入りに確認すべきである。


3.人工心肺離脱

LVASとはLVを補助する装置であり、一方DCMはLV・RV両方とも心機能が低下している。よって、LVASが付いて改善するのは左心機能だけなのである。よって、人工心肺離脱時の最大のポイントは、

「具合の悪いRV」をいかに動かして「LVASが付いて元気になったLV」に適応させるか

である。

エピネフリンはほぼ必須であり、0.5γ以上で投与する場合もよくある。心収縮力を高め、後負荷(=肺血管抵抗)を下げるために、オルプリノン(かミルリノン)も必須であり、私はしばしば0.3-0.5γ使用している。NOガスは呼吸開始時から、最大濃度で投与しておく。DOA/DOBも10γで開始しておく。その他、NTG、hANP、シグマートなどは、担当医の好みで使用すればいいと思うが、この場合の主役ではない。気管内はマメに吸引し(出血しない程度にだが)「肺を軽く」することを心がけたい。

どうしてもRVが動かずPAが上昇する一方の場合は、「RVASも装着してBiVASにする」という方法もあるが、「BiVASの付いた患者は90%助からない」という事実も念頭におき、「なんとしてでもLVASだけで乗り切る」という強い意気込みでがんばって欲しい。


4.人工心肺離脱後 ・・・adequateで妥協せず、optimal volumeを探せ

LVASを効率よく運用するためには、心腔内がペッタンコにならず、RVに負担をかけない、その心臓にとってoptimal(=最適)な循環血液量を探しだし、維持につとめる必要がある。PA圧÷血圧<0.3程度で管理できれば理想的だが、しばしば0.5程度で妥協せざるを得ない。TEEの使い手ならば、血圧が80台を維持させつつTRが最小になるようなバランスのvolume管理を心がけたい。

しばしば、大量のMAP/FFP/Pltが必要になり、CVPは10台後半はザラ、時には30を超えることもあるが、ひるまずポンピングを続け、体循環を維持しなければならない。

「左心系と右心系を独立して管理」「肺を軽くする」「大量輸血で血圧を維持」・・・・
ここらへんのポイントは、小児循環器外科症例、とりわけFontan循環の管理にかなり似ていると思う。よって、LVASの麻酔管理は、「off-pump-CABG中心の心臓麻酔科医」よりも「小児循環器の得意な麻酔科医」のほうが、習得しやすい技術ではないかと考えている。

それでは、A先生と同僚のみなさん、Good Luck!

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2006年11月 2日 (木)

臨床麻酔学会お礼

 臨床麻酔学会&プチ休暇が終了し、大学病院の日常業務に戻ってきた。学会を主宰するA医大麻酔科のメンバーは、ワークショップ世話人をしながら、別の講演の座長もやり、教育講演演者をあつめたカクテルパーティーを主催しつつも、その合間に大学病院の緊急手術に呼ばれることもあったようであるが、学会運営の表面上はそういった混乱を感じさせるものはなかった。しいて難点を挙げれば、旭山動物園の園長先生が自分の講演している学会のことを「日本麻酔学会」だと、信じきっていたことぐらいかな。

 新研修医制度でなにかと苦労している地方医大教官の一人として、学会運営スタッフのご苦労を推察するとともに、遅ればせながら大変感謝していることを伝えたい。

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2006年10月28日 (土)

臨床麻酔学会 TEEセミナー

こちらのファイルは、臨床麻酔学会 TEEセミナー II 

昨日から始めたTEE
-初心者から初級者への道のり-
弁疾患の患者さんに挿入してみよう

参加できなかった方や、講義中にノートをとりきれなかった方のためのの控えです。
「僧房弁→僧帽弁」に訂正しておきました。座長のO先生、ナイスな突っ込み有難うございました。
残念ながら、メモリーの関係で動画は動きません。あしからず了承ください。

「tee_lecture_for_blog.ppt」をダウンロード


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