2011年3月16日 (水)

JB-POT直前(じゃないけど)講座2011 番外編2 電気や酸素の途絶

「ついでにネパールでの停電や酸素配管の暴発についても知りたい」とのリクエストがあったので追加する。

最初に、現地で大変お世話になった本を紹介しておく。
Primary Anesthesia
という、ケニア在住の英国人(?)麻酔科医の執筆した教科書であり、現在ではamazon経由で入手できるようである。(私は度重なる引越しで紛失してしまったので、残念ながら手元にはない)。胸壁聴診器による術中モニタリング、ケタミン点滴による静脈麻酔など、電力など社会的インフラに制限のある場所での麻酔の工夫が、たくさん詰まっている。(ある世代以上の麻酔科医にとっては懐かしい内容かもしれない。)現在の日本でも、被災地での麻酔や、停電下での麻酔維持の参考になると思う。ふんだんな挿絵も、なかなか味がある。


10年以上前、私はネパールの病院で、約1か月間の麻酔業務に従事していた。
症例は5才男児の陰嚢水腫であった。

酸素ボンベーハロセン気化器ージャクソンリース回路を接続しただけのシンプルな麻酔器で、酸素ーハロセンによる緩徐導入で就眠させ、点滴を確保した。マスクーバッグ換気で麻酔維持しつつ、術野では消毒を進めていたところ、突然の暴発音が響き、バッグの手ごたえがなくなった。劣化していたゴムの配管が、内圧上昇で破裂したらしかった。

患者の自発呼吸はほとんどなかったが、幸いにも手術室の壁際にアンビューバッグがあった。空気換気で何とか患者の酸素飽和度は維持できたので、点滴よりケタミンを静注し、麻酔を維持することが可能になった。手術そのものは約20分で終了したので、ケタミンの追加は不要だった。


手術室が停電になったのは、ネパール出張もほぼ終わる頃だった。そもそも手術室には電気コンセントが2つしかなかったので、同時に電子機器は2個しか使用できない。麻酔中生体モニターは、聴診器と触診(脈診)および日本から持参した携帯酸素飽和度計のみであった。酸素ボンベはインドから輸入する貴重品で、術後酸素投与は基本的にはなかった。アトロピンやエフェドリンなどのアンプルは、目立つところに並べてはいるが、アンプルを切るのはそれなりにバイタルが変動したときに限られる。人工呼吸器は半径500kmにはないので、麻酔中は全て手動換気であった。

手術も終盤の頃、突然に手術室は真っ暗になった。看護婦は「あら、停電だわ」とつぶやいて、なれた調子で懐中電灯を取ってきて術野を照らした。外科医もなれた調子で電気メスをあきらめて結紮で止血した。私もいつもの麻酔維持をそのまま続行した。手術が終了すると、看護婦はわたしの手元を照らしてくれたので、患者の顔色や胸郭の動きを参考に、難なく患者を覚醒させた。

結語
1.停電下の麻酔維持にケタミンはけっこう使える。
2.酸素の途絶に備えてアンビューバッグを確認しよう。
3.可能ならば、たまには手動血圧計+聴診器のみをモニターにして手動換気で、電気なしで麻酔を維持するシュミレーションをしてみよう。
4.爺医の昔話ベテラン医の経験談を侮るべからず
5.途上国医療は災害医療と共通点が多い。チャンスがあれば災害医療の練習と思って、途上国医療を経験してみるのも悪くない。

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2011年3月15日 (火)

JB-POT直前(じゃないけど)講座2011 番外編 人工心肺中の停電

皆さんご周知のとおり、本日より東北大震災の影響で首都圏でも輪番停電が実施されることとなった。電車の運休、ガソリン不足、なかなかつながらない電話、錯綜する停電情報をのりこえて、なんとか本日の予定手術を無事に終了することができた。それなりにしんどい一日だったが、被災者のご苦労を思えば我慢すべき範疇であろう。

帰宅し、節電以外に私なりにできることは・・・と考えたところ、
「人工心肺中に突然停電し、停電下に人工心肺離脱を強行した一例」
の経験があるので、今後の停電に関係して誰かの役に立つかもしれないので(たたないことを祈っているが)、簡単にまとめておく。
例によって、細かい数値はうる覚えなので、マネする場合は自己責任でお願いしたい。


6月のよく晴れた日のことだった。
57才男性、狭心症の診断で人工心肺下CABG4枝が予定された。
心機能は比較的良好で、麻酔導入→グラフト採取→人工心肺装着→バイパス吻合までは特に問題なかった。
吻合終了後の心臓再鼓動は問題なく、ドパミン少量+ニトログリセリン+ニコランジルをシリンジポンプで流しつつ、体温の復温を待っていた。

時刻は13時頃で体温34.5度のころ、突然にあらゆる電子機器がストップした。
なぜか天井灯のみが点いていた。

手術室内のスタッフは比較的冷静で
「雷?」
「朝は晴れだったのに?」
「そのうち非常用電源が点くよ」
「TEEが電力を喰いすぎなんじゃない?電源を抜いてみれば?」
などと会話しつつ、電力の復旧を待つこと5~6分・・・

モニターはシャットダウンしたままだった。人工心肺は内臓バッテリーでとりあえず動いてはいたが、電力は復旧する雰囲気がなかった。心臓外科医+ME+麻酔科医で目配せし、「このまま不安定な状態を続けるよりは、体温が低めだけれど人工心肺を離脱しよう」と決定した。

若手MEが機転を利かせて、血液ガス測定装置のバッテリーを外してモニターに接続してくれたので、基本的なバイタルサイン数値は知ることができた。カテコラミン類はシリンジポンプのバッテリーでしばらく注入できそうだった。心臓に気合を入れるべくCVからオルプリノンを1ml注入し、心臓が多少元気になってきたところで、人工心肺よりボリュームを負荷した。久々にTEEではなく直視下の心臓の大きさで、人工心肺離脱時のボリュームを決定した。人工心肺は内臓バッテリーではメインのローラーポンプしか動かない機種だそうで、サッカ吸引ではハンドルによる手回し(医龍2で登場したのを覚えている方もいるだろうか)が登場した。

人工心肺離脱後は当然のことながら人工呼吸器が使えないので、麻酔科医が手動でバッグを揉んで換気をすることになった。麻酔科医が一番忙しい時期に片手がふさがるのは、けっこうつらかった。追加の薬剤をシリンジに吸ったり、回収血をポンピングするのはなかなかつらい。他の麻酔科医たちは研修医の部屋に優先的に応援に行ったらしく、私の部屋にはだれもこなかった。

手動換気を続けること約30分、突然に電気は回復した。その後の手術は順調に進み、手術終了後に症例はすみやかにICUに運ばれ、十分に加温した数時間後に問題なく抜管された。


当然のことながら、停電および非常用電源が作動しなかった原因が調査された。

停電の原因:4月からその病院では電子カルテを導入したので、大量のパソコンやらプリンターやらが院内に追加されていたが、その時点では問題なかった。ただし6月末の晴天日の昼ごろということで、病院のあちこちでクーラーのスイッチを入れたので「電カルの容量負荷+夏季容量負荷」が重なって、電力供給能を超えてしまってブレーカーらしきものが作動したそうである。

非常用電源の作動しなかった原因:その病院の手術部は増築に改築を加えたので、タコ足にタコ足を加えたような電力配線だったそうである。天井灯だけはなぜか上階の病棟から配線をひっぱており、また手術部の非常用電源は「完全な停電」にならないと作動しないシステムだったそうである。

個人的には、私にとって「手術中の停電」はネパール(酸素配管の暴発も経験)、ニューヨークに次いで3度目(ただし開心術では初めて)だったので、比較的冷静に対応することができた。


結語

1.非常用電源を過信してはいけない。
2.人工心肺中に停電となったら、麻酔科医は人工心肺中にあらゆる薬をシリンジに吸っておき、離脱後の手動換気にそなえる。
3.明日、手術室に行ったら懐中電灯とバッテリーの在処を確認しておく。
4.酸素も途絶する可能性があるので、セルフインフレーション式アンビューバッグの在処を確認しておく。
5.電カル導入後1年ぐらい(少なくとも夏を越すまで)は用心すべし。

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2010年10月10日 (日)

0ff Pump CABG の麻酔(JB-POT直前講座2010-1)

なんだかんだ言っても、我が国における開心術症例数の約半数はCABGであり、現在その過半数はOff Pump CABGではないかと推測されるが、その割には自信をもって研修医にすすめられる「Off Pump CABGの麻酔」の教科書などは少ない。

その理由としては、

1.心臓麻酔の教科書としては今なお北米の有名病院の出版物が幅を利かせているが、北米では(心臓外科医にもよるが)必ずしも「Off Pump CABGはOn Pump CABGより秀でた術式」と認識されていないせいか、CABGにおけるOff Pump CABGの割合は日本ほど高くない→麻酔のノウハウが蓄積されず成書となったものが少ない。

2.我が国では、Off Pump CABGの割合は高いが、いかんせん「実際に麻酔をかける人」と「学会で講義したり教科書を書く人」が同一でないことが多い。よって、「実際に麻酔をかける人」からみると「学会の講義や教科書の記述」が、「学問としての麻酔科学」としてはともかく「商売としての麻酔」としてはズレていることがよくある。


という訳で、両者のズレを埋めるべく、記事をまとめてみたいと思う。例によって、「個人的思い込み>文献的エビデンス」の文章なので、本記事を参考に麻酔をかける場合は自己責任でお願いしたい。

A.グラフトの種類と注意点

CABGに使用される血管グラフトは動脈グラフトと静脈グラフトに大別され、前者ではとりわけITA(内胸動脈)、RA(橈骨動脈)など血管の両端を切断するfreeグラフト、GEA(胃大網動脈)が、代表例として挙げられる。

a.静脈グラフト
長所は血管のスパズムが起こりにくいこと&長いグラフトが採取できること、短所はグラフトが詰まりやすく5年程度しか血流が保てないとされている。CABGの歴史の中で毀誉豹変にさらされてきたが、なんだかんだ言って今なおベストセラー&ロングセラーのグラフトである。
 麻酔科医にとっては吻合直後からの心筋への血流が期待できてスパズムの心配をしなくてよいのは助かるが、それゆえにしばしば緊急手術で使用され、かならずしも麻酔管理が楽勝とは言いがたい。

b.ITA(内胸動脈)
動脈グラフトゆえにスパズムのリスクはあるが、吻合箇所が一ヶ所なので後述するfree動脈グラフトよりはスパズムは起こりにくい。長さに制限があるため、吻合部位に制限がある(特に右ITA)。ニコランジルやNTGなどのスパズム予防策が必要だし、吻合直後は十分な血流が得られず心機能も期待したほど回復しないことがまあまあある。たまに、スパズム予防と称して(麻酔科医に無断で)ミルリノンやオルプリノンをワンショットする外科医がおり、突然に心拍数や心拍出量が増加することで推察することができるので「何か(薬品を)入れましたか?」などとすかさず答えてクギをさしておこう。
 ITAの採取にあたって人工呼吸に伴う肺の動きが外科医の操作とぶつかることがあり、一回換気量などに細かく注文をつける外科医がいるが、可能な限り応じてあげよう。

c.(橈骨動脈)RAなどfreeの動脈グラフト
吻合箇所が2ヶ所の動脈グラフトなので、スパズムが起こりやすい。対策は前述。

d.GEA(胃大網動脈)
テレビドラマにもなった「外科医 須磨久善」に登場することでも知られる。腹腔内の動脈を胸部に持ってきて吻合するので、私が研修医の頃には「10年以上開存してITAの届かない部位に吻合できる画期的なグラフト」と注目されていたが、GEA採取後の胃がん発症リスクや「意外と詰まりやすい?」との報告もあり、現在ではさほどもてはやされていない。
 麻酔科医の仕事としては、外科医がGEA採取にかかる前に胃管を挿入して空気を抜いておく必要があるが、胃管はTEE操作にともなって抜けやすいので注意が必要である。また、「開胸+開腹」となるので、手術直後は一般的な開心術の麻酔に比べて腸間膜など「いわゆるサードスペースへの水の移行」を念頭において輸液を計算する必要がある。上腹部の開腹となるため、術後疼痛も従来の開胸のみのCABGよりは強くなりがちで、スパズムを誘発しないためにも、持続モルヒネ注などの術後疼痛対策が望ましい。


B.吻合部位による注意点
Off Pump CABGは、どこを吻合しているかによって、起こりやすい合併症が異なる。麻酔中は現在どの血管を吻合しているかを念頭におきつつ、術野+モニターを監視したい。

a.LAD領域
もっとも合併症が少ない領域である。心臓を脱転する必要もあまりないのでTEEも活用できる。血行動態が安定するので、しばしば若手外科医が担当することがあり、予想外に時間がかかることもたまにある。

b.RCA
不整脈の管理に苦慮することが多い。術野から一時的ペーシングのリードを出してもらい、外科医にリードの先端を直接心筋に装着してもらうと有用である。また、ペーシングポート付きのSwan-Ganzカテーテルも有用である。

c.Cx
心臓の脱転による血行動態の急変がおこりやすい。また、脱転中は心室と食道の接触が悪くなり、「一番心臓の内部をみたい時に良好なTEEの画像が得られない」というジレンマがある。スタビライザーの当て方によっては、たまにPFOが開いて血行動態が変化することもあるが、スタビライザーの当て直しで解決することが多い。この場合にはSvO2の値なども参考になる。

d.99%狭窄は100%よりハイリスク
吻合部位の「99%狭窄」は「100%」より管理が難しい。100%(=閉塞)ならば、吻合中にこれ以上血流が低下することはなく、その先の心筋への影響を心配する必要はないが、99%狭窄部位においては1%分の血流がその先の心筋細胞をギリギリで養っていることがあり、このような部位での吻合中の血流途絶は想定外の血行動態悪化をまねくことがある。


C.早期抜管?
off pump CABGの麻酔と言えば、手術室での抜管やら、ラリンゲアルマスク、さらには覚醒下手術など、一時期は早期抜管がもてはやされる傾向にあった。私個人は「LITA-LADを中心とした1~2枝バイパス」など、条件の整った症例でしか手術室抜管は行っていないし、覚醒下手術の経験はない。
 GEAやfree RA症例など、術後疼痛やスパズムのリスクの高い症例では、一晩ICUでたっぷりの麻薬やら鎮静&鎮痛剤を使用し、血行動態の安定した翌朝以降に抜管に持っていくことが、患者のみならずICUスタッフやら当直医のメリットは大きいと考えている。


D.試験対策
とりあえず、「心臓を脱転させると心室が描出できなくなる」「スタビライザー圧迫によってPFOが開くことがある」あたりが出題されやすいのではないかと思う。


産後の体力低下+原因不明のジンマシン+慣れない育児でバテバテの日々である。ショボくて申し訳ありませんが、本年度の直前講座はこれにて終了とさせていただきます。

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2009年9月11日 (金)

JB-POT 直前講座 2009-5 心筋炎

8月4日に放送されたNHK「たったひとりの反乱 娘はなぜ死んだのか 医療の壁と闘った夫妻の8年」を、ビデオに撮ったまま放置してあったのをやっと見終わったので、この記事を書いてある。いわゆる「新宮心筋炎裁判」である。番組の内容は、

5才の愛娘が苦しがっているので、深夜に病院に連れて行った。入院後医師は脱水と判断し、点滴のみで放置した。しかし、娘は苦しむ一方で、心筋炎と診断されたときには手遅れで死亡した。医者の説明に納得のいかなかった両親は訴訟を起こし、1審は無罪だったが2審で「医療ミス、5400万賠償」との判決となった。医師達は上告しようとしたが、市長が自宅まで謝罪に出向き、上告断念を決定、判決が確定した。

要するに「心筋症は適切な治療を施せば助かる、救命できなかったら5400万」というのが、裁判所およびNHKの判断らしいのだが、一度でも心筋症を診たことのある医者だったら、納得できないと思う


1.早期診断?

心筋炎に特異的な症状はない。「なんとなくだるい」「むくみ」「頻脈」などなど、よくある症状である。教科書的には「心電図での全誘導でのST変化」などが挙げられるが、タイミングによっては頻脈程度しか変化がないことは多く、無論ふつうのカゼでも頻脈はよくあることなので、それだけで心臓疾患を疑うことは難しい。しかし、何かのはずみで心臓にエコーを当てれば「DCMのような全周性壁運動低下」を認めるであろう。

かぜ患者のうちの数万人に一人程度の頻度だが、先行するウイルス感染が何故だか心筋に波及して炎症をおこすことがある。また、明らかな先行感染がなく、いきなり心不全に至ることもある。劇症心筋炎のイメージとしては

47歳男性:日曜日にゴルフをしていたが、昼食頃から体がだるかった。午後のプレーは早めに切り上げ、風呂場で同僚に顔色不良を指摘された。帰りの車中で失神し、そのまま救急病院に連れてゆく。外来で血圧が測れず、即入院→ICUにて挿管+人工呼吸器+カテコラミンを開始→血圧が維持できず夜中にPCPS挿入・・・

といったスピードで進行する。これはかなり運がよかったケースであり、「ゴルフ場で失神→救急車を呼ぶが間に合わず」に終わるケースもまあまあある。


2.治療

劇症型心筋炎の治療は、大きく2つ

A.補助循環を装着→自己心機能の回復を待つ
B.心移植

である。日本国内では小児の心移植は絶望的(今年やっと合法化されたばかり)なので、

A1、迅速にPCPSを装着して、自己心機能の回復を待つ(ただしPCPS単独では3日程度が限界)
A2、迅速にPCPSを装着→VAS(補助心臓)を植込んで自己心機能の回復を待つ(管理がよければ1000日以上待てる)
となる。

要するに、私が大学病院で現役だった時代でも「ダメ元、間に合ったらラッキー」の病気だった。「ヘリポートで天候の回復を待ってるうち死亡」なんてケースも経験した。大学病院は弱体化し、国循も「ICU医全員辞職」ショックから回復できない現在では、救命率はさらに下がっていると思われる。


3.小児の劇症心筋炎→補助心臓への細く長い道のり

おまけに、NHKがとりあげた症例は5歳児であり、救命率は成人例よりさらに厳しい。

新宮市の病院には心臓外科があったので、なんとか小児用の回路を入手して院内でPCPSを装着→ヘリで最寄のVAS植込み可能な病院に搬送するしかない。和歌山県だったら、最寄は大阪の国立循環器病センターあたりだろうか。

また、国内で正式に認可された小児用VAS(補助心臓)はない。成人用サイズのVASに大量の血管拡張薬を併用して、無理やり機械に患児の血行動態を順応させなければならない。「そんなのかわいそう」と流量を下げれば、あっというまに血栓ができ、それが脳に飛べばGame Overである。国内でのVASを扱う施設のなかでも、こういった小児VAS管理の経験豊富な施設は、さらに数が少ない。


4.結語

小児の劇症心筋炎の救命率とは「サイコロで3回つづけて1が出たら救かる」といったレベルの話であある。救命できなかった医師に高額の賠償金を課して、さらにNHKで再現ドラマを全国放送するという行為は、今なお救急の現場にとどまる医師の士気をくじき、医療崩壊を促進するものでしかない。


5.テストに出そうなのは?

とりあえず、心筋炎といえば全周性のST変化とDCM様エコー画像を覚えておこう。

それでは、今年のレクチャーはこれにて終了とさせていただきます。
あさっての試験、がんばってください。

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JB-POT 直前講座 2009-4 心臓移植の麻酔

ブログ主が担当したことのある心臓移植は3症例である。しかし、これでも日本国内では「経験豊富」に属するらしいので、一応その要点を記しておく。


1.アメリカのマニュアルを鵜呑みにしてはいけない

「心移植の麻酔」を担当する麻酔科医は、外国(多くは米国有名病院)の文献を取り寄せて勉強しているのではないかと思うが、そういう努力は無駄とはいわないが,医療事情の違いを理解せずにマネすることは大変危険である。我が国での心臓移植チームは、北米にくらべてかなり劣悪な条件で闘わなくてはならない。


2.2ヶ月待ちの米国、2年待ちの日本

米国では年間2000例の脳死心臓移植が施行されているが、日本では年10例未満である。この差は、「アメリカ人は日本人よりボランティア精神が深い」と言うよりは、米国の「医療費のとんでもない高騰化」「米国の民間保険会社は終末医療打切が早い」「移植に同意するとドナーの終末期医療費をレシピエント側が払ってくれる」あたりが原因と思われるが、長くなるのでここでは触れない。

「心臓移植を希望する患者がレシピエント登録を開始~実際に心臓移植ができるまでの期間」を待機日数というが、大雑把に言って米国では2ヶ月、日本では2年である。よって米国では「心筋梗塞後の心不全」程度でも、(金さえ積めば)病態が悪化する前に移植医療を受けられる。一方、日本の移植希望患者が実際に手術を受ける頃には、何度も心臓手術を受けて補助心臓を装着された状態であることが多い。対象患者のほとんどは心筋症の成れの果て、自己心機能は絶望的に低い(EFが測定できない、など)ことが多い。

よって、米国では(初開胸の)心臓移植は心臓外科レジデントが執刀することが多いが、日本では開胸だけで一苦労、その後もひたすら癒着との戦いとなり、ベテラン外科医による剥離ワザが必要になる。ワーファリンなど抗凝固薬がしっかり効いた状態で手術にのぞまねばならない場合もあり、麻酔科医はそれなりの覚悟で輸血一式の準備をしなければならない。


3.Marginal heart(イマイチのドナー心)

上記のように、日本ではまだまだ圧倒的なドナー不足なので、Marginal heart(要するに、イマイチのドナー心)による移植で妥協しなければならない場合がある。理論的には「体表面積1.8m2でCardiac Index2.0の低拍出ぎみの心臓を、体表面積1.2m2の患者に移植すればCardiac Indexは3.0で正常心となる」ということだが、そうは問屋がおろさない。

心臓移植の麻酔の難易度は、結局のところ入手した「ドナー心の心機能」に大きく左右される。「健康な20代のフレッシュな心臓を、阻血時間2時間以内で輸送」といったケースならば、移植された心臓は最低限のカテコラミンだけで勝手に動き出す。一方で、ドナー患者の受傷状態や臓器搬送などで、ドナー心が傷んでしまった場合は、手術中も術後管理も苦しい闘いを強いられる。


4.人員整理におおわらわ

日本ではまだまだこの手術は一般的ではなく、大イベントになってしまうことが多い。心臓外科スタッフが総動員されるだけにとどまらず、複数の大学や循環器センターからのエラいベテラン外科医が集まって、患者頭側の麻酔科スペースに陣取ってみんな口々に好き勝手なことを、麻酔管理上の助言をいただけることが多い。

カテコラミンの量ひとつとっても「5ガンマ」だの「1000分の50」だの「50ミリリットルに150ミリグラム換算で6速」などなど、質問主を確認しつつ相手に理解しやすい用語で返答しなければならず、「ティッシュあげてくれへん?」「テーブルダウン」といった注文にも手術の進行状況と発言者のバックグラウンドから瞬時にどちらの意見を採用するか判断するという、高度に政治的なテクニックも必要となる・・・ちょっと目を離すとTEEのキーボードを誰かが肘で突いて設定が変わったり・・・カテコラミンのラインと三方活栓が知らない間に外れたり・・・油断もすきもありゃしない・・・
とりわけ「精神科医の院長」とか「糖尿内科の学長」などが手術室に入りたがることもあるが、「感染防止」などを口実に手術室入室を阻止したい。ここらへんは麻酔科教授の腕のみせどころだと思う。


5.移植はいつだって緊急手術

当然のことながら、脳死心臓移植は緊急手術である。「ドナー心の阻血時間を最短にする」ことを第一に手術スケジュールを決めるために「AM1:00入室」といったキツイ時間帯になることがまあまあある。また、幸いにAM10:00入室のように比較的マトモな時間帯となったとしても、他の手術をいくつかキャンセルすることになり、移植の翌日などに追加症例となることが多い。

移植手術が終了すればお祭り騒ぎは一段落するが、現実の手術部運営では「延期症例のマネージメント」や「徹夜で働いたスタッフを十分休ませる」ことが終了してこそ「心臓移植が終了」と言えるのではないかと思う。

ちなみに、私の経験した3例では3例とも翌日は通常勤務であった。


6.試験のポイント

「こんなの試験に出ないんじゃ?」と思った皆さん、そのとおり!

心臓移植関係で出題されるとすればDenervation(除神経)あたりだろうか。ドナー心を摘出する際に、ドナー固有の心臓周囲の神経は除去される。よって移植直後は、ドナー心とレシピエント患者の神経の連絡はなく、アトロピンは無効である(心拍数を上げたいときは、イソプロテレノールかペースメーカーを使用)。

また、心移植後の心電図ではP波が2つ(患者固有のものとドナー心由来のもの)みられることがあるので、このあたりが出しやすいかも。画像問題では画像だけでなくその下に表示されるECGを読み込むのもお忘れなく。

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2009年9月 8日 (火)

JB-POT 直前講座 2009-3 βブロッカーはワンショットに限る

本記事は、某麻酔科医の思いつきで構成されており、特にエビデンスはありません。


ランジオロール(オノアクト)は短時間作用βブロッカーであり、afなどの頻脈性不整脈に有用とされている。静脈内持続投与が基本であり、0.01~0.04mg/kg/minの用量で適宜調節するそうである。

私も「af合併患者の非心臓手術」などで愛用しているが、シリンジポンプ最後に使用したのは・・・少なくとも一年以上前である。じゃあ、具体的にどう使用しているかと言うと「1バイアル50mgを20ccで希釈してモニターを見ながら0.5~2ccずつTitration」している。

モニターといっても、非心臓手術ではTEEはおろかA-lineも入っていない場合が多い。ならば具体的に何指標にしているかと言えば、af患者ではHR(ECGによる心拍数)とPR(SpO2による心拍数)が異なっている。心臓の有効な拍出量に寄与するのは当然PRであり、HR-PRは心房のムダな空打ちの回数と考えてよい。これらとBPを指標に管理している。

「HR=190、PR=67、BP=85/43」のようにHRとPRに倍以上の開きがあり、なおかつ血圧も不安定といったシチュエーションだと、「シリンジポンプを持ってきて~コード+延長コードをつないで電源を探して~ロック式の50ccの注射器を探して~三活と延長チューブをつけて~薬を希釈して~血中有効濃度に達するのを待って~」と悠長なことをやっているうちに、血行動態が収集がつかなくなることがある。こういうときは(無論、輸液不足や浅麻酔を除外診断の後だが)、すかさずワンショットで「ムダに空打ちしている心房を押さえ込む」のだ。しばらくするとHRは下がるが、PRはさほど下がらないか、かえって上昇する場合もある。たとえBPが想定外に下がり「シマッタ!入れすぎた!」と思っても、ランジオロールは短時間作用型なので、「じっとガマン」していると、それなり回復する。


上記の話を、フリーランス麻酔科医を集めたO野薬品の説明会でしたところ、フリー仲間には同調者が多かったが、O野薬品学術部の面々はビミョ~な表情であった。なお、マネするばあいは自己責任でどうぞ。

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2009年9月 2日 (水)

JB-POT 直前講座 2009-2 IVS/PW

IVS/PWとはinterventricular septum/posterior wall の略である。
左室心筋の心室間の厚さ/後壁の厚さを計測したもので、正常値は8~13mmかつ両者の比が1.3以内である。
文献によってはIVST/PWTと表記される場合も多い。この場合のTはthicknessの略である。

JB-POTの出題アウトラインには入っていないが、大抵の経胸壁心エコーにはこの計測項目があるし、心エコーレポートに目を通す際には私は必ずチェックしており、個人的にはE/A比より重要視している。でも、麻酔科の術前診察では、「EF=76%、弁逆流なし、IVS/PW=22/17」だと「心エコー上問題なし」と判断する麻酔科医が多い(しかもそういう人に限って麻酔科指導医だったりする)ので、入室時直後のECGを見てピンと来てカルテをひっくり返すとIVS/PWの異常値を見つけて、「やばー、危なかった」と地雷を回避できたりするのである。


1.何故やばいのか

LVOTO左室流出路閉塞を起こしやすいからである。ファロー四徴症の右室流出路狭窄の左室バージョンだと思えば理解しやすいかもしれない。肥厚して狭い左室流出路+麻酔導入直後の末梢血管拡張(=心室内は相対的にvolume不足)によって、十分に拍出できなくなるのである。対処方法はこれまたファロー四徴症のスペル対策と同じく、十分なvolume(ヘッドダウンや足の挙上も含む)とα刺激薬(メキサンやネオシネジン)、場合によってはβブロッカーも考慮される。かつては「心筋の動きを抑えるために、わざとハロセンを使う」という手もあったらしい。

一番ありがちだがやってはいけないシナリオは
前夜からNPOで脱水気味→深く考えずに麻酔導入(特に脊椎麻酔)→血圧下降→エフェドリン投与→血圧ますます下降→狭心症を考えてNTGのような血管拡張薬を投与→とんでもなく血圧下降→イノバン開始・・・・
であろう

また、IVS/PWの肥厚している症例ではLVEDVが狭小化するため、計算上のLVEF%は高くなる。素直にM-Mode法で計測すると、EF=87%などといった数値が平気で登場するのだが、「わあ~、心機能がスゴくいいんだ」などと感心するのは大間違いである。(EFだけで心機能の高低を決めるのは、月給だけで医者の就職先を決めるぐらい無謀なことである)。


2.異常の頻度は、高血圧性>>AS>肥大性心筋症

IVS/PWやLVOTOは教科書的には肥大性心筋症の項目で説明されることが多いが、日常臨床でIVS/PWの異常値をみつけるのは、圧倒的に高血圧性が多く、ついでAS、そして肥大性心筋症はかなりまれである。

高血圧患者ではIVS/PW=17/16など対称的に肥厚をきたす場合がほとんどである。しかし17/16程度でも術前輸液がイマイチの状態で麻酔導入すると、とてつもない血圧下降をきたすことがある。日常臨床でも「高血圧患者に麻酔導入したら、すごく血圧が下がって困った。エフェドリンだけではなくネオシネジンも使ってやっと血圧が回復した」といった経験はわりとあると思う。こういう患者に心エコーをするとIVS/PWの上昇を認めることが多い。

ASの術前診察では、えてしてAVAと最大圧較差(instantenousとpeak-to-peakの違いをお忘れなく)をチェックして終了になってしまうのだが、麻酔導入時のトラブルを回避するためにもIVS/PWをチェックしておきたい。

3.地雷を踏まないために

日々の診療では、術前診察を他人に任せて、申し送られた情報をのみたよりに麻酔をかける場合も多い。「心エコー問題なし」などと書かれれば、それ以上追求することはまれであろう。だったら、どうやって地雷を嗅ぎ分ければよいのか・・・それはECGである。

どんな弱小病院でも手術室に心電図はある。麻酔導入前に少なくともII誘導は確認できるであろう。IVS/PWの上昇している患者ではECGでLVHパターン(要するに高いR波や深いS波)が見られる。こういう心電図を見たら、すかさず輸液負荷とα刺激薬の準備した上で、麻酔導入に臨みたい。

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2009年8月31日 (月)

JB-POT直前講座 2009

最近、心臓麻酔ネタが少ないせいか
「JB-POTの直前ぐらい、お勉強の記事をアップして欲しい」
とのリクエストが多いので、アドバイスを少々。


私がNBEやJB-POT試験勉強したのは2004年だった。当時はいわゆる試験対策本もなく、日本語の麻酔科医向けTEEの教科書も2~3冊程度、結局はOttoの教科書をひたすら読んでいた。当時はアメリカでResearch Fellowをしていたので、「自分の論文に使えそうな文章を探す」という意味でもひたすら読んでいた。

でもって、試験当日に、選択肢の最後の2つで迷ったときに、Ottoで読んだかすかな記憶が決め手になってもぎ取った得点、というのがわりとあったように思う。

「いまさらOttoなんて、あんな厚い英語の本が2週間で読破できるわけないじゃないだろ!だいたい、今から注文しても間に合わない」とお怒りの方、ごもっともである。ただ、「心臓麻酔にこだわらず、広く循環器科を勉強する」というつもりで勉強するのが、結局は近道だと思う。


具体的には

・医者だったら本棚に「朝倉内科学」のような内科教科書が1~2冊は(読んだかどうかは別にして)転がっていると思う。それの循環器学の章を再読する。学生時代にはただ退屈だった教科書も、医師になり実際にSwan-Ganzカテーテルやペースメーカーを自分でいじった経験をふまえて再読すると、わりとスラスラ読めるものである。また、多少なりともJB-POTの試験勉強をした後ならば「僧帽弁前尖のDDR」といった記述も頭に入りやすい(というか、学生時代はわけもわからずこんなものよく丸暗記してたものだ・・・)。ここらへんで、断片的に詰め込んだ知識を再整理しておきたい。、

・手元にあれば、国家試験で使用したイヤーノートも再読する価値はある。ゼロから覚えるよりも、一度は目にした図表のほうが頭に残りやすい。(ただし、関係ないところを読んで、青春の思い出にふけって、時間を浪費しないようにご用心を)

・日本語ならば吉川の臨床心エコー図学もおすすめである。手元になくても、循環器内科の医局か心エコー室には多分あると思う。超音波の原理関係はやっぱり日本語が読みやすい。値段はそれなりだが、その価値はあったように思う。

・技士向けであるが、下記ページも訪問する価値はある。
http://jinrigi.hp.infoseek.co.jp/index.htm

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2008年9月21日 (日)

心疾患合併非心臓手術におけるTEE(学会おまけ)

おかげさまで、学会の教育講演は無事に終了しました。台風もどこかへ去ったようだし。
何が大変って、副都心線の渋谷駅のホームから地上に出るのに10分以上かかってしまい、学会場にたどり着けないんじゃないかとパニックになりそうでした。
でもって、時間の関係であまり説明できなかった事項を補足しておきます。

症例は、
「狭心症の既往がありステント留置後の低位前方切除術」であったが、
「周術期のモニターとしてのTEE」について追加説明しておきます。


1.EF:カテコラミン使用の指標

左室駆出率を測定することで、「カテコラミンを使用するか否か」「カテコラミン量の調節」「カテコラミンが多すぎて心臓が無駄に仕事をさせられている」を判断することができます。EFの測定方法としては、壁運動異常がある場合にはM-modeでは誤差が大きいので、少なくともArea法、できればSimpson法での測定が望ましいです。

心疾患合併症例の術前カンファで最も話題になりやすい計測値がEFですが、EFとは通常LVEFの略であり、心臓の4つの部屋のうちのLV(もっとも大切な部屋ですが)の収縮能の指標でしかありません。EFは心機能の全てを代表する値ではありませんし「非発作時には心エコー上異常のない狭心症患者」というのはゴロゴロいます。「EF70%」と言われても安全が保証される訳ではありませんし、「EF35%」でもLAD梗塞後の心臓をM-modeで測定した値だったら、さほど騒ぐ必要はないのかもしれません。


2.LVDd/LVEDV:Volume管理の指標

 LVの直径や容積、そしてその推移を測定することで、Volume管理の指標とすることができます。「CVPの値を参考にVolume管理を行う」に近い感覚です。

3.DT、E/A ratio:NTG、ニコランジルの指標

 左室拡張能を数値化することによって、NTG、ニコランジルの有効性を確認することができます。NTGやニコランジル投与を開始すると、トゲトゲしかったE/A波がなだらかになるのを見ると、ちょっとうれしくなります。


4.LAAの血栓・モヤモヤエコーの描出

 心疾患合併症例では、周術期の抗凝固薬の管理は麻酔科医の悩みのタネであります。あんまり出くわしたくないシチュエーションですが、術前に抗凝固療法を中断・変更した症例では、左室(とくに左心耳)に血栓がみつかることがあります。左心耳は血栓の好発部位ですが、経胸壁エコーでは観察がむづかしく、「TEEを入れてびっくり!」ということがたまにあります。


5.肺塞栓:右心系拡大+TR

 これもあまり出くわしたくないシチュエーションですが、術中の肺塞栓が即時に診断できます。血栓が直接エコーで見れる場合もありますが(この場合の致死率は高い!)、血栓が小さくても二次的な右心負荷(=RA,RVの拡大およびTR)によって、診断することが可能です。


6.TEE初心者のトレーニング

 TEEといえば「心臓麻酔のおまけ」と考えられやすいのですが、心臓麻酔初心者は麻酔そのもので手が一杯になりやすく、TEEを操作する余裕がないことが多いです。こういった、心疾患合併非心臓手術で積極的にTEEを使用し、麻酔の合間に操作の練習をすることは、麻酔科医にとっても有意義なことだと思います。


7.臨床研究テーマとして(追加)

 欧米に比べて日本の病院が集約化されていないことは広く知られています。「開心術が年2~3000件(もしくは0件)」というのは欧米では当たり前のことですが、わが国では「年50~200件が乱立」しています。よって、心臓麻酔の臨床研究をデザインしようにも、統計的な有為差が出るだけのデータを集めることは困難です。
 だからといって、「日本ではTEEを使った臨床研究はできない」と決め付けるのは早計です。欧米では、麻酔科サブスペシャリティの分化が進み、「心臓麻酔部門」と「ペイン部門」だとあたかも別の科ぐらい交流がない場合が多いのです。一方、わが国の麻酔科医はいまだに「何でも屋」であることが要求されます。ゆえに「硬膜外麻酔がLV拡張能を改善するか?」といったサブスペシャリティを超えた研究の立案・実行は、我が国の麻酔科医のほうが有利だと私は思います。
 「ウチの病院じゃ、開心術は週1回しかないから、マトモな研究はムリだ」と考える医師よりも「ウチの病院じゃ、週4日はTEEが自由に使えるから、なんか研究してみよう」と考える医師に、研究の女神は微笑んでくれるのではないでしょうか。

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2008年5月30日 (金)

初心者から研修医のための 経食道心エコー

ひさびさの、心臓麻酔の話題

初心者から研修医のための 経食道心エコー

という本が出版されました。

26人の分担執筆者のなかに、私も参加させていただき2章ほど担当しております。
フリーランス麻酔科医は私一人で、他は皆マジメな大学病院・基幹病院の勤務医のようですね。ちなみに、私の「肩書き」については、自宅を本社にして作った「会社の社長」ということになってます。

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