心疾患合併非心臓手術におけるTEE(学会おまけ)

おかげさまで、学会の教育講演は無事に終了しました。台風もどこかへ去ったようだし。
何が大変って、副都心線の渋谷駅のホームから地上に出るのに10分以上かかってしまい、学会場にたどり着けないんじゃないかとパニックになりそうでした。
でもって、時間の関係であまり説明できなかった事項を補足しておきます。

症例は、
「狭心症の既往がありステント留置後の低位前方切除術」であったが、
「周術期のモニターとしてのTEE」について追加説明しておきます。


1.EF:カテコラミン使用の指標

左室駆出率を測定することで、「カテコラミンを使用するか否か」「カテコラミン量の調節」「カテコラミンが多すぎて心臓が無駄に仕事をさせられている」を判断することができます。EFの測定方法としては、壁運動異常がある場合にはM-modeでは誤差が大きいので、少なくともArea法、できればSimpson法での測定が望ましいです。

心疾患合併症例の術前カンファで最も話題になりやすい計測値がEFですが、EFとは通常LVEFの略であり、心臓の4つの部屋のうちのLV(もっとも大切な部屋ですが)の収縮能の指標でしかありません。EFは心機能の全てを代表する値ではありませんし「非発作時には心エコー上異常のない狭心症患者」というのはゴロゴロいます。「EF70%」と言われても安全が保証される訳ではありませんし、「EF35%」でもLAD梗塞後の心臓をM-modeで測定した値だったら、さほど騒ぐ必要はないのかもしれません。


2.LVDd/LVEDV:Volume管理の指標

 LVの直径や容積、そしてその推移を測定することで、Volume管理の指標とすることができます。「CVPの値を参考にVolume管理を行う」に近い感覚です。

3.DT、E/A ratio:NTG、ニコランジルの指標

 左室拡張能を数値化することによって、NTG、ニコランジルの有効性を確認することができます。NTGやニコランジル投与を開始すると、トゲトゲしかったE/A波がなだらかになるのを見ると、ちょっとうれしくなります。


4.LAAの血栓・モヤモヤエコーの描出

 心疾患合併症例では、周術期の抗凝固薬の管理は麻酔科医の悩みのタネであります。あんまり出くわしたくないシチュエーションですが、術前に抗凝固療法を中断・変更した症例では、左室(とくに左心耳)に血栓がみつかることがあります。左心耳は血栓の好発部位ですが、経胸壁エコーでは観察がむづかしく、「TEEを入れてびっくり!」ということがたまにあります。


5.肺塞栓:右心系拡大+TR

 これもあまり出くわしたくないシチュエーションですが、術中の肺塞栓が即時に診断できます。血栓が直接エコーで見れる場合もありますが(この場合の致死率は高い!)、血栓が小さくても二次的な右心負荷(=RA,RVの拡大およびTR)によって、診断することが可能です。


6.TEE初心者のトレーニング

 TEEといえば「心臓麻酔のおまけ」と考えられやすいのですが、心臓麻酔初心者は麻酔そのもので手が一杯になりやすく、TEEを操作する余裕がないことが多いです。こういった、心疾患合併非心臓手術で積極的にTEEを使用し、麻酔の合間に操作の練習をすることは、麻酔科医にとっても有意義なことだと思います。


7.臨床研究テーマとして(追加)

 欧米に比べて日本の病院が集約化されていないことは広く知られています。「開心術が年2~3000件(もしくは0件)」というのは欧米では当たり前のことですが、わが国では「年50~200件が乱立」しています。よって、心臓麻酔の臨床研究をデザインしようにも、統計的な有為差が出るだけのデータを集めることは困難です。
 だからといって、「日本ではTEEを使った臨床研究はできない」と決め付けるのは早計です。欧米では、麻酔科サブスペシャリティの分化が進み、「心臓麻酔部門」と「ペイン部門」だとあたかも別の科ぐらい交流がない場合が多いのです。一方、わが国の麻酔科医はいまだに「何でも屋」であることが要求されます。ゆえに「硬膜外麻酔がLV拡張能を改善するか?」といったサブスペシャリティを超えた研究の立案・実行は、我が国の麻酔科医のほうが有利だと私は思います。
 「ウチの病院じゃ、開心術は週1回しかないから、マトモな研究はムリだ」と考える医師よりも「ウチの病院じゃ、週4日はTEEが自由に使えるから、なんか研究してみよう」と考える医師に、研究の女神は微笑んでくれるのではないでしょうか。

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初心者から研修医のための 経食道心エコー

ひさびさの、心臓麻酔の話題

初心者から研修医のための 経食道心エコー

という本が出版されました。

26人の分担執筆者のなかに、私も参加させていただき2章ほど担当しております。
フリーランス麻酔科医は私一人で、他は皆マジメな大学病院・基幹病院の勤務医のようですね。ちなみに、私の「肩書き」については、自宅を本社にして作った「会社の社長」ということになってます。

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朝日新聞(大阪版)に載ってしまった

かの朝日新聞(なぜか大阪版)に載ってしまいました

6月末のある夜、見知らぬ男性からのメールあり。「このブログを見た新聞記者で、麻酔科医不足を取材している」そうな。数回のメールのやり取りの後、「私の発言を記事中に引用する場合には、最終原稿をチェックさせてもらい、場合によっては訂正することができる」ことを条件に、取材を受けることとなった。

7月初頭のある夜、記者は大阪から埼玉のはずれのわが街までやってきた。待ち合わせ場所はコーヒー店の一角、黒かばんをテーブル脇に置いた、30代半ばとおぼしき記者が待っていた。1時間程度で終わるかと思いきや、話が盛り上がり(というか、相槌の打ち方など相手の話を引き出すのが上手なんですね、さすかプロの記者です)コーヒー2杯で結局3時間以上ねばってしまった。

参院選の直前ということで、大阪社会部で「美しい国とは」というシリーズで、安部政権の政策を検証しているそうで、医療崩壊の一例として麻酔科医不足を取り上げるそうだ。医局が健在だった時代から医療問題を追っており、「三次救命センターの当直に張り付く」式の取材経験もあるそうで、私の印象としては、医療現場の実態についても的外れな発言はなかった(少なくともうちの両親よりは、よっぽど解ってました)。先月は、コムスン関係に忙殺されていたそうである。

その後も、数回のメールのやり取りの後、下記のPDFファイルのような記事となった。取材内容がどのようにして新聞紙面になるかの過程も垣間見ることができて、個人的にも面白い経験であった。(しかし、現場を飛び回る記者の数に比べ、会社にじっと居座って若い記者の集めた原稿をあれこれいじってる人間の数が多すぎるような気がするのだが・・・)

幸か不幸か、東京版には今のところ載っておらず、仕事先でとやかく言われることもなかった。「飛び込みセールス」とか、ブログの「あらし」も今のところはなく、安心したような、反応がなくてちょっとさびしいような気分である。ちょうど出張麻酔先で「CABG+僧帽弁形成術」の予定が「CABGのみ」に変更になったような気分・・・(って、かえってわかりにくいかしらん・・・?)

「20070711_.pdf」をダウンロード


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LVAS装着術の麻酔

先ほど、携帯に旧知(窮地?)の麻酔科医A氏より電話があった。

「明日の7:30から、DCM(拡張性心筋症)の患者にLVAS(補助人工心臓)を装着することになったんだけど、うちの病院の麻酔科医はだれもLVASなんて見たことないんです・・(中略)・・どうやって麻酔すればいいんですかねえ?」

簡単に電話でLVAS装着術の要点を説明したのち、「ほかに準備するものはないですかねえ?」と言ってるので、「じゃあ、明日7:30までに要点をブログに載せとくから、今日は早く寝て鋭気を養っときなさい。」と答えた。でもって、この章を書いている。


1.手術室入室の前に ・・・身軽がトラプルを防ぐ・・・

LVAS装着術の対象は「LVASを装着しなければ、明日の命も保障できない、超重症心不全」である。術前の段階で、ICUに入室し、すでに挿管、Aライン、CVP、Swan-Ganzのフルコースが終了しており、さらには両方の大腿からIABPやPCPSが装着されていることが多い。さらには、各種薬物のシリンジポンプがクリスマスツリーのごとく並んでいるので、気の弱い麻酔科医ならば、見ただけで逃げ出したくなるような状態であることが多い。

ここであせってはいけない。シリンジポンプの内容をよく吟味してみよう。カリウム、抗生剤、インスリンといった、「当面の支障のない薬品は可能な限り中断」するのが望ましい。「ヘパリンは入室時に中止」する予定ならば、病棟を出る段階で中止にしてポンプははずしておく。点滴ライン類も、「とりあえず生食でキープ中」のものは、ヘパリン生食でロックしておき、スパゲティ状態の改善に努めるべきである。整理すれば、手術室入室前に、点滴やシリンジポンプの数は、半分以下に減らせることが多い。また、このライン整理は、主麻酔科医が中心に行うのが望ましい。整理しながら、どのラインがどこに入っているかを把握することができるからである。抗生剤はICUを出る前に終了するか、手術室入室後に落ち着いてから開始すべきである。

こういう超重症例では、カテコラミンの三活トラブルだけで、あっという間にGame Overになりうる。患者移動や入室の前後は、多数の人間が関与するし、その中には超重症例の扱いに慣れていない人間も含まれる。トラブルを防ぐ方法として、管理するラインや薬品の数を、あらかじめ減らしておくことをお勧めする。

また、IABPの同期がECGに依存している場合、新人看護師などが気軽に電極をはがそうとするのをしばしば目撃するが、けっしてはがされないよう目を光らせなければならない。


2.人工心肺までにすべきこと

PCPSが装着されている場合の麻酔導入は、一般的な心臓外科手術よりもずっと簡単だと思う。麻酔薬の影響で患者の心機能や低下しても、機械が助けてくれるからである。末梢血管の拡張によって、急激な血圧下降が見られる場合もあるが、大抵はネオシネジンやノルアドレナリンなどで、SVRを上げれば回復する。「早期抜管」など誰も要求しないので、心ゆくまで大量の麻薬や筋弛緩薬を使おう。

忘れてならないのは、TEEによるPFOの確認である。PFOは開いたままだとLVAS循環が成立しない。一見シャントがなさそうに見えても、バルサルバ動作や発泡コントラスト剤(アルブミンを少量加えた生食を泡立てても代用できる)で、念入りに確認すべきである。


3.人工心肺離脱

LVASとはLVを補助する装置であり、一方DCMはLV・RV両方とも心機能が低下している。よって、LVASが付いて改善するのは左心機能だけなのである。よって、人工心肺離脱時の最大のポイントは、

「具合の悪いRV」をいかに動かして「LVASが付いて元気になったLV」に適応させるか

である。

エピネフリンはほぼ必須であり、0.5γ以上で投与する場合もよくある。心収縮力を高め、後負荷(=肺血管抵抗)を下げるために、オルプリノン(かミルリノン)も必須であり、私はしばしば0.3-0.5γ使用している。NOガスは呼吸開始時から、最大濃度で投与しておく。DOA/DOBも10γで開始しておく。その他、NTG、hANP、シグマートなどは、担当医の好みで使用すればいいと思うが、この場合の主役ではない。気管内はマメに吸引し(出血しない程度にだが)「肺を軽く」することを心がけたい。

どうしてもRVが動かずPAが上昇する一方の場合は、「RVASも装着してBiVASにする」という方法もあるが、「BiVASの付いた患者は90%助からない」という事実も念頭におき、「なんとしてでもLVASだけで乗り切る」という強い意気込みでがんばって欲しい。


4.人工心肺離脱後 ・・・adequateで妥協せず、optimal volumeを探せ

LVASを効率よく運用するためには、心腔内がペッタンコにならず、RVに負担をかけない、その心臓にとってoptimal(=最適)な循環血液量を探しだし、維持につとめる必要がある。PA圧÷血圧<0.3程度で管理できれば理想的だが、しばしば0.5程度で妥協せざるを得ない。TEEの使い手ならば、血圧が80台を維持させつつTRが最小になるようなバランスのvolume管理を心がけたい。

しばしば、大量のMAP/FFP/Pltが必要になり、CVPは10台後半はザラ、時には30を超えることもあるが、ひるまずポンピングを続け、体循環を維持しなければならない。

「左心系と右心系を独立して管理」「肺を軽くする」「大量輸血で血圧を維持」・・・・
ここらへんのポイントは、小児循環器外科症例、とりわけFontan循環の管理にかなり似ていると思う。よって、LVASの麻酔管理は、「off-pump-CABG中心の心臓麻酔科医」よりも「小児循環器の得意な麻酔科医」のほうが、習得しやすい技術ではないかと考えている。

それでは、A先生と同僚のみなさん、Good Luck!

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JB-POT直前講座2006 番外編

2006年のJB-POTの結果の返送が開始された。さぬちゃんをはじめとして、合格者の皆様、おめでとうございます。

今から約5年前、医学博士号を取得した際に指導教官より送られた言葉である。(ちなみに、彼が博士号を取得した際にも同じ言葉を送られたそうである。)

「結婚はゴールではなくスタートである」というように「学位というのはゴールではなくスタートなんだ。研究者として独り立ちした証であって、ここから医学研究が始まるのだよ。」

新規合格者の皆さん、私は以下の言葉を贈る。
JB-POT合格はTEE画像診断医として独立してスタートに立った証であって、けしてゴールではない。

JB-POTに合格してからのほうが、疑問にぶつかることも多い。しかも、このレベルからの疑問は教科書に正解が載っているとは限らない。だが、こうした疑問から逃げることなく、時間はかかっても一つ一つ対峙してゆくことによって、かつて見えなかったものが少しずつ見えてくるのである。しばしば、TEEを挿入せずとも、ECGやAライン・CVPの波形から、患者の心臓の中で何が起こっているのか推測できるようになってゆく。

麻酔科医として、いや医師として、この見えなかったものが見えてくる悦びはなにものにも換えがたい。私がいまだに、「今日はLVAS、明日はNorwood」という、人使いの荒い大学病院勤務を続けている理由でもある。


ちなみに、JB-POTの合格者のことをJB-POTter(ジェイビーポッター)と呼ぶそうである。

・・・JB-POTterは大学病院の囚人・・・てこと?

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臨床麻酔学会お礼

 臨床麻酔学会&プチ休暇が終了し、大学病院の日常業務に戻ってきた。学会を主宰するA医大麻酔科のメンバーは、ワークショップ世話人をしながら、別の講演の座長もやり、教育講演演者をあつめたカクテルパーティーを主催しつつも、その合間に大学病院の緊急手術に呼ばれることもあったようであるが、学会運営の表面上はそういった混乱を感じさせるものはなかった。しいて難点を挙げれば、旭山動物園の園長先生が自分の講演している学会のことを「日本麻酔学会」だと、信じきっていたことぐらいかな。

 新研修医制度でなにかと苦労している地方医大教官の一人として、学会運営スタッフのご苦労を推察するとともに、遅ればせながら大変感謝していることを伝えたい。

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質問受け付けます(JB-POT直前講座2006-9)

受験生のみなさまはラストスパートに忙しいことと思います。

TEEに関する質問やコメントは17日正午まで受付し、その夜までには回答する予定です。
その他(進路相談から耐震建築まで?)は、随時回答させていただきます。

今回、私は長崎の学会は参加いたしませんが、10月の臨床麻酔学会ではTEEの教育公演を一コマ担当する予定であります。

では皆様、旭山動物園…ではなく旭川でお会いしましょう。

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Swan-Ganz挿入困難(JB-POT直前講座2006-8)

TR,PHを術前より指摘されている症例では、しばしばSwan-Ganzカテーテルが挿入困難である。SGカテの挿入困難な場合、教科書的には放射線ガイド下の挿入が勧められるが、TEEガイド下の挿入もなかなか有用である(というか、私はこれしか知らない)。TEEでカテーテルが進むべき方向の見当をつけ、同時に弁の開閉するリズムをつかみ、カテーテルを挿入するタイミングをつかむ。具体的な手順は以下のとおりである。

まず、気管内挿管が終わったら、TEEプローべを挿入しておき、内頚静脈への清潔操作をはじめる。

A.刺入部からRAまで

90度のbi-caval viewで画面右側に見えるのがSVCである。カテーテルを15cm程度進めれば、右側から線状の人工が見えるはず。バルーンを膨らませれば先端がわかりやすいが、同時にバルーンの両サイドに弧状のアーチファクト(Side Lobe)が出現するので、カテーテルのワイヤー部と混同しないようにする必要がある。Side Lobeはエコー画面の扇形の縁と同心円状に出現するので、注意深く観察すれば区別できる。

B.T弁を突破(RAからRV)

TRのある症例では第一関門である。45度でA弁がベンツのマークように描出できる画面を探すと、同時にA弁の9時方向にRA、6時方向にRV、3時方向にPAが描出できるはずである。心電図の同期音のリズムを頭の片隅で刻みながら、画面でTが開くタイミングを確認し、T弁が開いた隙に5cm程度ずつカテーテルを進める。RA内に明らかにループが見えるようならば、バルーンを萎ませてループが消失するまでカテを引き戻す。

C.P弁を突破(RVからPA)

Bと同様の画面で、心電図の同期音のリズムを参考にP弁が開くタイミング(P弁が描出困難ならばA弁の開くタイミングにあわせる)をつかみ、5cm程度ずつカテーテルを進める。教科書的には「バルーンを楔入させ、PCWPを確認せよ」とあるが、PHや低心機能の症例ではしばしばバルーンは楔入しない。やみくもにPCWPを追求することは、しばしばカテーテルの肺動脈への穿孔をまねきやすい。

D.左右肺動脈への選択的挿入

上部食道で0度のまま軽くUpをかけると、主肺動脈+右肺動脈+左肺動脈の基部が描出できる。左肺動脈のほとんどは気管の影になるため、TEEでは描出できない(Blind Zoneと呼ばれる)。SGカテは、自然な屈曲があるため、約9割の症例では右肺動脈に流れ着く。右肺全摘など、左肺動脈へのSGカテ挿入が必要な場合には、上記の画面を出しながら、カテにトルクをかけながら進める。


忘れてはならないのは、SGカテの挿入は手段であって目的でなはい。SGカテ挿入に夢中になるあまり、その間に「点滴が全開になっており、心不全患者に急速輸液がされていた」といった事態は、ありがちだが、あってはならないことなのである。「20分以内」などと時間を決めて、それまでにSGカテを肺動脈まで進められなかったならば、スリーブを着せていったん撤退し、体位を整え、外科医が手洗いに行っている間に再挑戦すればいいのである。


また、SGカテの2大合併症は肺動脈穿孔とカテーテル縫込である。

肺動脈穿孔:穿孔が疑われたならば、基本的にはカテーテルを抜いてはいけない。カテーテルがあることで穴からの出血がおさまっていることがあるからである。盲目的にカテーテルを抜いたならば、一気にに出血し、同時に出血点を見失うおそれがある。

カテーテル縫込:SGカテを使用した症例では、閉胸時にカテーテルを5cm程度ひっぱって、カテーテルが動くことを確認しておく。動かない場合には(退室前に)大声で騒ぐ。一回これを見つけると、どんなに横柄な心臓外科医でも、その後しばらくはおとなしくなる(はずである)・・・

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Swan-GanzとTEE(JB-POT直前講座2006-7)

先日、ひさびさにSwan-Ganzカテーテルを挿入した。よく考えたら、2006年の初Swan-Ganzだった。うちの大学では、10年前から開心術の全例(含む小児)でTEEを使用している一方で、2006年現在開心術の95%以上の症例ではSGカテを使用していない。というのも

「術中にSwan-Ganzカテーテルで得られる情報のほとんどはTEEで得られる」というのが当院のモットーである。個人的にも「TEEとSGから得られるデータの量と質は、テレビとラジオぐらい違う」と思っている。よって「ラジオニュースをテレビで確認することはあっても、その逆はまず不要」だと考えている。


具体的には

 A.PA圧→TRより簡易ベルヌーイの式から算出する

 B.Cardiac Output (Cardiac Index)→TEEよりStroke Volumeを算出しHRを乗じて算出(さらに体表面積で補正)

 C.PCWP
PCWPそのものは直接TEEでは算出できない。しかしPCWPが臨床的重要なのは、(PCWP≒LAPであり)LAPは左心機能の前負荷の指標となるからである(CVPが右心機能の指標であるように)。前負荷の指標ならば、LVEDV:LV end-diastolic volumeが(もっと簡潔にはDs: diameter of systoleが)TEEによって測定可能である。

よって、麻酔科医が術中に前負荷の指標が必要ならば、LV短軸像で収縮期の直径を観察し、その推移を把握しておけば臨床的には十分だとおもう。そしてLVEDVやDsはTEEを挿入できる症例ならば、ほぼ全例で測定可能である。

一方SGカテのPCWPは、肺高血圧や心不全症例ではしばしばバルーンが楔入しない。臨床的に前負荷の指標が欲しい重症例において、えてしてデータが得られないというジレンマがある。

 D.SvO2(混合静脈血酸素飽和度)
SvO2はTEEでは測定できない。しかし、開心術や(SGカテの挿入が検討されるような)重症心不全ならばCVPカテーテルはまず挿入されているので、そこから採血した血液のSaO2を測定すれば概算値は推定できる。SVC=上半身の静脈血になるので厳密には混合静脈血ではないが、臨床的には十分だとおもう。近年では各種の測定機能をそなえたCVPカテーテルも開発されており、SGの必要性というのはますます薄れているようにおもう。

SGはたまには心臓に縫い付けられたり(先々月に某大学付属病院で、縫い付けられたSGカテを無理やり抜去して患者死亡を招き、お約束の白衣の謝罪記者会見がTVで報道された)、肺動脈を突き破ったりすることもある。一方、TEEプローべにはまずその心配はない。外国ではTEEプローべによる食道穿孔の症例報告もあるが、多くはP・・・・社やA・・・・・社のような外資系メーカーの武骨なプローべによるもので、アロカや東芝といった国産メーカーの華奢なプローべによる穿孔の報告は、私はまだ知らない。

しかしながら、当院でもたまにはSGカテを使用している。
SGカテの長所は何だろうか。

 E.ペーシング機能が付加できる

SGカテにはペーシングリードを備え、一時的ペースメーカーとして使用できるものが販売されており、治療手段としても使用可能な種類がある。TEEは基本的には診断しかできない。文献的には食道ペーシング機能をそなえたTEEプローべの研究報告はあるが、私自身は見たことがなく、実用化にはまだまだ時間がかかりそうである。

 F.術後管理など中長期のトレンドを観察
「TEEとSGは、テレビとラジオぐらい違う」と先にのべたが、現代でもラジオの需要がまったく無くなった訳ではない。情報量が少ないからこそ、カーラジオのように「ラジオを聴きながら運転」といった他の操作が可能なのである。術後にICUで、「他の患者の処置をしながらさりげなく心機能のトレンドを観察する」という技は、TEEでは困難である。

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ロスとTEE(JB-POT直前講座2006-6)

よく考えてみれば最近あまりTEEに役立つ情報がないので、前回の記事に追加しようとおもう。

臓器移植や盛んな米国では、ホモグラフト(死体より採取し、冷凍保存した)弁の入手が容易なため、ロス手術はわが国より盛んに行われている。複雑な肺動脈弁の形成術が不要になるからだ。わが国で「ロスの名手」と噂される心臓外科医の多くが小児の心臓外科医であるのに比べて、米国からの報告は成人を対象とする施設が多いように思う。

ゆえにこの手術をめぐる知識は、NBEなどの試験に出やすい。また、JB-POT出題者の多くはNBE合格者であり米国留学経験者なので、日本では一般的とはいえないこの手術も出題されるリスクは(わが国で行われる件数の割には)高いとおもう。なお、うちの施設は(幸か不幸か)ロス手術を得意とする外科医が在籍している。

若年者の大動脈弁疾患は二尖弁であることが多い。(JB-POT直前講座18)参照。
二尖大動脈弁にロス手術を行う場合、に最初に確認すべきなのは「肺動脈弁が三尖であるか」どうかである。大動脈二尖弁は高率に肺動脈も二尖であり、この場合はロス手術の適応とならない。肺動脈弁は食道から遠く、TEEでの描出が困難なため、術前のTTEで不十分な場合には開胸後に直接肺動脈にプローべをあてて検索されることが多い。

人工心肺離脱後は、とにかく出血との戦いに苦渋することが多い。なんせ、吻合箇所が多いし人工心肺時間も長くなりがちである。かといって、「出血による低血圧」だと思っていたら「植え替えた冠状動脈が屈曲していた」こともあるので、血圧が低下した時にはLV短軸像で「hypovolemia」なのか「asynergyをともなうLV failure」なのかをチェックしておきたい。

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ロス疑惑2006(JB-POT直前講座2006-5)

更新が滞っており受験生の皆様、申し訳ありません

8月上旬に世間をさわがした医療関連報道のなかに、水戸市の病院において「18才の少年がロス手術の翌日死亡」した事件のことをご記憶だろうか?「自分のレベルをわかっていない外科医が難手術に無謀な挑戦をした挙句の悲劇」といった報道が目立ったが、心臓手術チームの一員として、この事件から学べることについて考えてみようと思う。


1.ロス(Ross)手術について

大動脈弁疾患に対する、弁置換術の一種である。自己の肺動脈弁を切除し、大動脈弁に植え替える。肺動脈弁は、
・A.自己心膜で形成
・B.ゴアテックスシートで形成
・C.ホモグラフト(死体より採取し、冷凍保存した弁)で置換
の3法がある。

・利点としては
 「自己組織なので成長につれて大きくなる」
 「自己組織なのでワーファリン(=催奇性あり)が不要」
とされているが、

・欠点としては
 とにかく難しい。「大動脈から冠状動脈を切り離して大動脈弁を切除し、肺動脈弁を切除し大動脈に植え、冠状動脈を植え替え、肺動脈弁を形成して肺動脈に植える・・・」と文章で書くのは簡単だが、手術時間は8時間~エンドレスである。簡単にホモグラフト肺動脈弁が入手できないわが国では、必然的にAかBで肺動脈弁を形成せざるをえず、ますますこの手術を困難なものにしている。よって、わが国でこの手術を独力で完遂するには、弁置換のみならず、大動脈外科(Bentall)手術をマスターし、冠動脈を植え替える手術(Jateneなど)、肺動脈弁形成術(ファロー四徴手術など)などの先天性心疾患手術経験が必要になると思われる。成人・小児・大血管にわたる広範な心臓外科トレーニングが必要と思われ、現在独立してこの手術を独立して行える心臓外科医は国内でせいぜい20人と推定できる。


2.この少年に適応のあった他の術式は?

・D.機械弁(SJMなど)による弁置換
・E.ステントレス生体弁(Freestyleなど)による弁置換
・F.ホモグラフトによる弁置換
・G.心尖部から導管を建て、その先を弁置換

などが挙げられる。

それぞれ
・D.「もっとも簡単で丈夫」だが「一生ワーファリンが必須(女性の場合は妊娠が困難になる)」
・E.「Dよりやや煩雑だが耐久性がやや劣る」だが「ワーファリン不要」
・F.「手術難度としてはEレベル」だが「わが国ではホモグラフト弁の入手が困難」
・G.「きわめてまれにしか行われない」(私自身は直接みたことはありません、狭小弁輪などで行われるらしい)


3.あなたな~らどうする~♪
というわけで、(後だしじゃんけんなのは承知だが)、どうすればこの悲劇が回避できたのだろうか

ロス手術の利点は、前述のとおり「弁が成長する」「ワーファリン不要(=妊娠可能)」なので、小児や若い女性に行われることが多い。今回の報道で(心臓外科)業界関係者の多くが首をかしげたのが、「19才の少年」だったことである。身長や心臓サイズはほぼ成長が終了しているだろうし、妊娠の可能性はない。術式の選択としてもDEFあたりの説明をした上で、「ロス手術という選択肢もあるが危険性も高い」と説明するのがフェアなやり方だと思う。(あるいは、水戸市という土地柄か「納豆のない人生などありえない」と思ったのか・・・?)

うちのICUで、「私(=30代既婚未出産)がARになったら、ホモグラフトかフリースタイルだな。外科医がだれでもロスは怖いよ。出産はワーファリンをヘパリンに切り替えて体外受精かな。」と言うと、某心臓外科医が「そんなのは機械弁に決まってるじゃないか。手術中に予期せぬ出血があったとかいって、術式を変更すればいい。安全性が高く、麻酔科医が産休をとる心配がなくなるなんて、うちの医局にとっては最適の術式だ」

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Center line method(JB-POT直前講座2006-4)

今日はお盆のせいか、比較的手術件数も少なく、ひさびさに午後はゆっくり心エコー室にこもることができた。エコー室長でもあるM助教授から、いろいろ試験に有用そうな情報を仕入れてきたので、その一端をご披露しようと思う。

「Center line method」とは、左室局所壁運動異常を定量化する方法の一つである。10年前の「coronary steel」、5年前の「ischemic preconditioning」のように、1980年代には循環器業界ではそれなりに流行った単語らしいが、現在の多くの心エコーの教科書では掲載されていない。しかし、JB-POT出題アウトラインには、なぜか含まれているので、受験予定者ならば勉強してもソンはしないと思う。

Centerline_method

Center line methodは、そもそも心カテ造影における壁運動異常の定量化法であった。拡張期と収縮期の輪郭の中点をつなぎ、その中点をつないだ線を基準線とし、そこからの逸脱や肥厚の程度を100分割してグラフ化することによって評価する方法である(詳しくは図をクリックしてください)。

この方法は収縮期と拡張期の双方で明確な輪郭線を描出していることが前提となる。実際の心エコーは、両端のドロップアウトや乳頭筋と心筋の区別などの問題があり、全例で明瞭に描出することは困難である。(日常臨床では、いわゆる「心眼」でトレースして、なんとかしのいでいるのだが・・・)。ゆえに、Center line methodという用語はいつしか、心エコーの臨床現場からは忘れられていったのだと思う。

しかし、近年の心エコー高級機種のなかには、color kinesis(壁運動異常をカラー変化で表示するもの)モードが備わったものがある。Center line methodはその礎としていまも生きているのだろう。


でも、個人的には出題アウトラインとして取り上げるならば、もっと大事なこともあると思うのですが・・・「胸水の描出法」とかね・・・出題委員のみなさま、そろそろアウトラインも改定してもいい頃なのでは・・・?

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CATCH22 (JB-POT直前講座2006-3)

直接TEEには関係ない話題である。

世間は夏休みらしく、うちの病院でも比較的軽症な幼児~学童の手術が目立つ。
口唇・口蓋裂もそのひとつであるが、担当する研修医をつかまえてはしょっちゅう
「口唇・口蓋裂をみたら、隠れた先天性心疾患を疑え。心電図や胸レントゲンは念入りに観察せよ。」
説教している。研修医連中もきっと「口うるさいオバサン」だと、思っているに違いない。しかし、最近の研修医の傾向のひとつに「指導医の助言をうざったがるが、ネット上の情報は比較的素直に信じる」というのもあると思う。よって、いつか検索してもらえることを祈りつつ、ここに簡単にまとめておこうと思う。


CATCH22

染色体 22 番短腕 の異常、ファロー四徴症などの先天性心疾患を伴うことが多い。
私が国家試験を受験した頃は、DiGeorge症候群と呼ばれていたものが、さらに研究が進んで、呼び名も変わったらしい。

Cardiac defects (心奇形)
Abnormal facies (顔貌異常)
Thymic hypoplasia (胸腺低形成)
Cleft palate (口蓋裂)
Hypocalcemia (低カルシウム血症)

のような、同時に合併する頭文字を取って CATCH22 (キャッチ22)症候群と呼ばれている。


以下は、非医学的トリビアであるので、お暇な方のみどうぞ

「Catch 22」 はもともとジョゼフ・ヘラーによる、第二次世界大戦中の軍隊組織の中の不条理を書いた小説のタイトルであります。例えば、主人公は軍隊からの除隊を求めて自身の精神疾患を主張するのですがどうしてもそれが認められませんでした。軍規によって「精神疾患者は兵役を免除するが、自分で精神疾患者と申し出る者は本当の精神疾患者ではなく正常なので除隊しない。」と判断されてしまったからだそうです。

この小説はベストセラーとなり、「Catch 22 (Situation)」も 「どうにもならない理不尽な状況」を指す英語の慣用句となったそうです(留学先のカンファでも使われていましたっけ)。日本でも某医者作家の書いた「失楽園」という小説がベストセラーになり、「失楽園」という言葉自体も本来の聖書とはかけ離れた状況を指す慣用句となったようなものでしょう。
そして、この小説は、「卒業」 とか 「ワーキングガール」 のマイク・ニコルズ監督によって映画化もされているようです。

最近、病院関係者で話題の「医療崩壊」を読んでます。近年(2004年の新研修医制度発足以降)の、(とりわけ地方)大学病院の現状を予言する名著です。

後期研修医の指導に加え、スーパーローテーターの研修、歯科医師の研修、そしてよりにもよって新制度発足時と同時期に始まった救命救急士の挿管実習(現場の医師にとっては、教えてもまったく将来の戦力にならず、報酬はなし、文書で患者同意をとることが義務づけられ、そこに名前を書いた医師は事故の場合の責任だけとらされる。丁寧に指導すると「大学病院は面倒見がよい」といわれ、予定の3倍ちかい人数が知らない間に押し付けられているという矛盾・・・)

心臓麻酔、小児複雑心奇形、TEE・・・などなど、腕を磨けば磨くほど、リスクの高い症例を担当することになり、報酬は年功序列賃金のまま、夜中や休日の呼び出し回数のみ増えてゆく・・・

まさに「Catch 22」 といいたくなるような状況ではないでしょうか。

今日も午後から、新生児の複雑心奇形の緊急手術のため出勤予定です。

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コンコルドよりも早く(JB-POT直前講座2006-2)

日常臨床で、「3.5メガ」だの「5メガ」だのいってプローべを使い分けている方も多いと思いますが、「5メガ」のプローべの出している超音波の波長はどのぐらいの長さかご存知でしょうか?

「音の速さ=1マッハ=340m/s」で
「5メガ=5000000ヘルツ」だから
「5メガの波長=340m÷5,000,000=0.078mm」と思った方
              
      ハズレです、残念・・・

というのも、超音波診断装置はこの水中の音波の反射を測定することによって成立している訳ですが、音は水中では約1500m/sの速さで進みます。一方、1マッハ=340m/sというのは、音が空気中を伝わる速度ですので、この両者を混同しないようにしてください。

「5メガの波長=1,500m÷5,000,000=0.3mm」が、正解です

超音速旅客機のコンコルドは2,000km/h(≒590m/s)で進むそうですが、TEEプローべの出す超音波がぜんぜんヨユウで早いことになります。ちなみに、普通の旅客機はせいぜい250m/sぐらいだそうです。

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直前講座ふたたび(JB-POT直前講座2006-1)

7月下旬、TEE業界の関係者にはちょっとしたイベントがある。PTEeXAM; 米国の周術期TEE専門医資格試験(詳しく知りたい方はこちら)が発表される。ホームページによる発表なので、世界中から閲覧可能である。ちなみに、2006年度の8名の新規合格者を加えると、日本在住PTEeXAM合格者は合計31名となった。個人的には、秋の臨床麻酔学会を控えたせいか、旭川在住者の活躍が目立ったように思う。

TEE業界で、PTEeXAM合格発表の次のイベントといえば秋の心臓血管麻酔学会およびJB-POTであろう。昨年の、わがブログは受験勉強中の若手麻酔科医のみならず、「学会セミナー」から「2ちゃんねる」まで広く引用され、光栄のいたりである。私は基本的にはぐうたらな人間だが、おだてられると調子に乗り易い人間でもあるので、ふたたびBlogによる直前講座を再開してみようとおもう。

あれから1年、私は病院に念願のマルチプレーンTEEを購入してもらった(というか、2005年の時点でPTEeXAM合格者でバイプレーンを常用している麻酔科医はきっと日本でただ一人、世界的にもかなり稀な現象だったと思う)。その代償(?)として、あいもかわらず、オールナイトで心臓移植やら補助人工心臓の麻酔にはげんでいる。時々、試験に関係ない愚痴もとびだすと予想されるが、(新研修医制度でなにかと冷や飯をくわされている)地方大学病院の中堅スタッフの実情も併せて供覧できればと思う。

また、コメント・質問メールは大歓迎である。

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最後のあがき(JB-POT直前講座22)

いよいよ明日は試験ですね、1点でも多くもぎ取るためのヒントを追加させていただきます。

<弁口面積>
ASの手術適応となるAVAは0.5-1cm2程度
MSの手術適応となるMVAは1-2cm2程度   です。

計算問題などでお手上げの場合は、とりあえず上記の範囲内の数字をマークしておきましょう。

<壁運動異常>
LADかRCAかCxか見当がつかない場合はECGに注目しましょう。派手なST変化があればRCA、そうでなければそれ以外にマークしましょう。

<基本画面>
SCA基本画面のうちで、一つだけ見直すならばdeepTCLAX(深部経胃長軸像)をお勧めします。(ascending aortaとLVが逆さまになったViewです。)ASやLVOTの圧較差の求め方を復習しておきましょう。また、MVR後など人工物で画面がキラキラして、他の画面ではLVの観察が出来ない場合に、このViewが用いられます。


基礎分野(アウトライン1-5)の見直しをお忘れなく。少なくとも出題アウトラインにリストアップされている用語ぐらいは全て理解しておきましょう。


では、遠くで皆様の成功をお祈りしておきます。
Good Luck!

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質問にお答えします2(JB-POT直前講座21)

Q. いつも楽しく拝見しております。分からない事があり、教えていただければ幸いです。
心カテで、ASの圧較差に、peak to peakの圧較差、最大圧較差、平均圧較差でその意味することが異なるとのことですが、それぞれの意味すること、違いを教えて下さいませんか?宜しくお願いいたします。

A. maximum gradient/ peak-to-peak gradient (JB-POT直前講座14)をご参照ください。

若干、補足しますと、

まず、用語の整理をしたいと思います。

圧較差という用語には、最大圧較差と平均圧較差が含まれます。血圧という用語にも最高血圧とか平均血圧という用語が含まれるようなものです。

このうちの、最大圧較差は、「瞬時最大圧較差(maximum gradient)」と「 ピークからピークへの圧較差(peak-to-peak gradient)」の両方の測定方法があります。TEEからの計算値は前者で、心カテによる測定は後者です。ほとんどの場合、maximum gradient>peak-to-peak gradientですが、平均圧較差を求めると、TEEによる値も心カテによる値もほぼ一致します。(JB-POT直前講座14の図をご参照ください)

最高血圧にもカフ圧とAライン圧があり、末梢血管抵抗が高い場合などは「カフによる最高血圧」>「Aラインによる最高血圧」となることもあるが、平均血圧を比べるとほぼカフ圧=Aライン圧のようなものでしょうか。

イメージがつかめましたか?

いよいよ明日から心臓血管麻酔学会ですね。
管理人は、23日の一般演題1で発表ののちに、病院にとんぼ返りの予定です。直接質問したいことがある方は、会場で捕まえてください。(ピンクの上着で、LVASの発表をしている女医がそうです)

Blogでの質問は24日19:00を締め切りとし、(緊急手術などなければ)その夜のうちに回答したいと思います。

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質問にお答えします(JB-POT直前講座20)

Q1,左室全体の動きからEFを推定するときの目安はないでしょうか。Infの動きが悪いから○○%程度、とかAnt-Latの動きが悪いから ○○%程度とか。

A1.EFとはLVの最大容積と最小容積の差から算定されるデータであり、「Infの動きが悪いから-10%減」というように算定するものではありません。「DCMだとどこもasynergyがないけれどもEF15%」という症例もありますからね。

 実際の心臓手術の現場では、「心エコー専門医のぱっと見」によって、「EF40%、inf-postのhypo」などと診断が下されることが多いのですが、あとでビデオのデータと照らし合わせても、臨床的には問題のない誤差範囲のことが多いです。(というか、EFというデータはNIBP並に10%程度の誤差は覚悟しなければならないアバウトなデータだと思う。)
 具体的なLVEFの読み方としては、一画面だけとしたらTGSAXを出して

1.心電図(やその同期音)で心サイクルのリズムをつかむ
2.収縮期(一番小さいところ)に特に注目
3.だんだん拡張期にも注目し、その変動幅を残像として焼き付ける、壁厚の変化にも注目しましょう

 まずは、正常例を数多くみて正常の変動幅になれて、次いで壁運動異常のあるケースにチャレンジするのがいいと思います。その際に、一緒に見てくれるTEE指導医(NBEかすくなくともJB-POT合格レベル)がいると、トレーニング期間が5分の一以下で済むと思います。


教科書的な計測方法としては、以下の4種類

1.一次元的計測法;ある画面のLV直径の最大値と最小値より算定する。
Pombo法,Gibbson法,Teichholz法など、%FSの求め方と共通です。

2.二次元的計測法;ある画面のLVの最大面積と最小面積より算定する。
Area-Length法、FACの求め方と共通です。

3.三次元的計測法;二次元的計測を直交する画面で2回行って、立体的なLV容積を測定し算定。
Simpson法、modified-Simpson法、狭義のEFは3(か4)の方法で得られたデータのみをさします。

4.三次元的計測法;3Dエコーにより直接LV容積を測定し算定。
もっとも、3Dエコーがどこの病院にでもあるというシロモノではないので、試験には出ないと思いますが・・・


Q2,虚血についてTG SAX / ME-four / ME-two / ME-Laxで判断した方が良いように思うのですが、TG Basal SAXはどうしても必要でしょうか。(去年のセミナーではあんまり必要ないような印象でしたが実践法では ME-LAXが必要ないとの解答でした。


A2.「3枝のうちの責任病変はどれか?」という設問ならばTGSAXだけで回答できます。ME-four / ME-two / ME-Laxというviewは「この局所壁運動異常はASE16分割法によるとどこ?」という設問がでれば必要になってきます。TG Basal SAXは虚血よりもむしろMVP/MAPで必要とされるViewだと思います。

 ASE16分割法のキモは「anteriorの反対側はinferior」「anteroseptalの反対側はposterior」ではないでしょうか。何でこのような名前になったのか私は知りませんが、文句をいってるひまがあれば、とりあえず暗記したほうが合格への近道です。

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心臓だけではない(JB-POT直前講座19)

 昼間はまだまだ暑いながらも朝夕も過ごしやすくなった今日この頃、今週のあたまぐらいから大血管系の緊急手術が頻発している・・・秋の訪れを実感している・・・

 というわけで、TEEで得られる心外の情報についてまとめてみようと思う。数字については、私の個人的な実感(や、個人的に見聞きした値)であり、きちっとした文献的な考察ではないことを踏まえて、参考にしてください。

1.胸水

 アメリカ心臓麻酔学会の設定する基本画面に含まれていないせいか、各種の公開講座では軽視される傾向があるが、臨床上は大変重要である。(私はTEEを使用する開心術のほぼ全例でルーチンにチェックしている)。「一見穴が見当たらなくても、TEEで著明な胸腔内の液体を認め、吸引してもらうと200cc以上の血液が貯留していた」といったケースは、JB-POT合格者クラスの麻酔科医ならば一度は経験しているだろう。

 下行大動脈があるため、左胸水のほうが右胸水よりも描出しやすい(逆にTEEで右胸水が描出できる=400cc以上の液体が貯留していることを覚悟すべきである)。CABGで内胸動脈を採取した側や、体外循環後に説明のつかないPaO2低下を認めた場合は、特に念入りにチェックする。

 画像描出テクニックは簡単である。0度で4chamber-viewを描出した後に、プローベを約120度左もしくは右に廻すだけである。画像問題の際は、扇形の付け根に輪切になった下行大動脈が見えるほうが、左胸腔である。


2.無気肺

 胸水を描出するのと同じ画面で無気肺のチェックも可能である。正常な含気の肺組織は白くキラキラした斑のある灰色の組織として描出されるが、無気肺は肝臓のような暗い灰色である。対策としては、教科書のとおり気管内吸引&肺の加圧である。

 私は同様の画面で、TEEによって左用ダブルルーメンチューブが右肺に入っているのを発見したことがある。(「その前に、聴診で気付けよ」って・・・ごもっとも・・・)


3.心のう水

 心臓をとりかこむ黒いecho free spaceとして描出される。心臓の前面(画面の扇形の下側)が2cm以上あれば、500ml以上の液体の貯留が推定され、心のうドレナージの適応である(あるいは、緊急手術の呼び出しが待っている)。CVPラインがあれば、CV圧上昇で確認できる。

4.IABP

 まずはIABPの(ガイドワイヤー)先端が真腔にあることを確認する。(できれば)左鎖骨下動脈より3~5cm程度下方にあることを確認する。左胸水を確認するのと同じ画面で、大動脈内の人工物を探し、鎖骨下動脈が見える位置までプローベを引き抜いて、その引き抜き幅が3-5cmであるとO.K.である。
 TEEがない頃は、先端確認のためにいちいちX-pを撮らねばならず、できあがったX-pをとっても反対側の大腿動脈などに迷入していることもまあまああったそうである。また、偽腔に迷入したバルーンを膨らませたら・・・・一巻の終わりである。

5.IVCカニュレーション

 脱血管やPCPSカテーテルなどを大腿静脈からカニュレーションすることがたまにある。しかし、大腿からのCVPが腎静脈などに迷入しやすいように、大腿静脈からのガイドワイヤーは迷入しやすい。90度のbi-caval viewでRAの画面左側がIVCであり、ガイドワイヤー先端がそこに到達していることを確認する。正しく挿入されていれば、ワイヤーのみならず、外科操作にともなう気泡の混入も観察できる。

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AS; aortic valve stenosis (JB-POT直前講座18)

AS; aortic valve stenosis 大動脈弁狭窄

原因は(JB-POT出題レベルとしては)以下の3種

1.Congenital bicuspid AS 先天性二尖弁
 健康成人のほぼ5%の大動脈弁は二尖であり、無症状のまま天寿をまっとうする場合も少なくない。一尖弁やまれにはゼロ尖弁というのもあるが、成人する前に夭折する場合が多い。四尖弁やそれ以上の大動脈弁の報告もあるが(私が聞いた限りでは七尖弁まで・・・クローバーみたいだ)、このような多尖の場合はARになることが多い。
 若年(40歳以下)で発症することが多い。TEEで詳細に観察すると、癒着した尖と尖の間にraphe(縫線)が観察されることがある。

2.Rheumatic AS
 リウマチ熱に続発することが多いが、著明な発熱歴がない場合も多い。日本の近代化に伴ない、減少傾向。

3.石灰化によるAS
 多くは老人性。70歳以上で発症することが多い。透析患者でも好発。


現実の臨床では(マークシートでは出題しにくいけれども)1+3のような複合型も多い。出題されやすいのは、無論TEE画像の特徴的な1であろう。

その他の、出題ポイントとしては

AVA 弁口面積 の求め方
(1-3は直前講座11のMVAを参考にしてください)

1.Pranimetry
 まずは0°で4chamber-viewを描出し、TEEプローベを45°ぐらいまでまわして軽く引き抜くと、ベンツのマークの如きA弁が描出できます。もっとも開いたところでフリーズしてトレースします。健康成人ではPranimetryによるMVAの測定より簡単です。

2.連続の式
 SV (Stroke Volume)=(他の弁もしくはLVOTの)弁口面積×(そこを通過する)TVI=AVA×AVAのTVI

3.PISAによる測定
 理論的には可能です(が、綺麗な半球が得られにくいため非実用的ですが・・・)

4.triangle method 三角法

 健康人のA弁が開口すると、○型ではなく△型になります。1辺の長さ=Sとすると、

 AVA=正三角形の面積=S×√3/2S÷2      となります。

 あまり一般的ではありませんが、(臨床心エコーのバイブルとも言える)Ottoの教科書でも紹介されている方法です。なお、この方法を報告したThys&Hillelは米国のTEE業界の重鎮であり、実はこの2人は(JB-POTの黒幕である)J医大N村教授の師匠でもあるのです。

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cardiac tumor (JB-POT直前講座17)

ほぼ一週間ぶりの更新です。

主人の建築事務所関連の雑務に追われておりました。(このブログのタイトルも「女医の仕事&家庭&建築事務所の三立日記」に変更すべきか?)建築関連の話題は試験後までおいといて・・・

試験直前だというのに、(少ないながらも)愛読者の皆様申し訳ありませんでした。

cardiac tumor ご存知、心臓腫瘍のことである。
一般市中病院の心臓手術の現場では、ほぼ「心臓腫瘍=LA myxoma」なのだが、JB-POT出題者の多くが所属するのは大学病院であり、myxoma以外の腫瘍も目にすることがある。なおかつ、医者というものは(とくに大学病院勤務医は)「珍しいものをみつけると、他人に見せびらかしたくなる」習性をもつ者が多い。しかしながら、各地のTEE講習会では、「MRと弁形成」や「LV拡張能」などに時間をとられてこの疾患については割愛されることが多い。よって、本日は「cardiac tumor」についてまとめてみたいと思う。

当然のことながら「MRと弁形成」や「LV拡張能」は間違いなく出題されるので、講習会内容などをよく自習しておいてほしい。

1.Myxoma 粘液腫

 成人でもっとも頻度の多い、原発性心臓腫瘍である。圧倒的にLAに多いが次いでRAに多い。多くの場合、有茎性でIAS(Intra-Atrial Septum)のfossa ovalisに付着し、心臓の拍動にあわせてプラプラしている。良性腫瘍だが、ちぎれてbrain emboliをおこす事もあるので摘出手術の適応がある。麻酔上の注意としては、導入時のSVR下降にともない相対的にhypovolemiaになり心室が小さくなると、腫瘍が詰まって循環虚脱をおこしかねないので、充分な輸液が必要である。

2.LHIAS; Lypomatous Hypertrophy in Intra-Atrial Septum

 心房中隔の脂肪過形成。TEEでbi-caval view(90度)にすると、薄いfossa ovalisの前後に暑い脂肪腫(2cm以上)が見えるため、「ダンベルシェイプ」と呼ばれる。また、心周期に同調する動きが無い。基本的には治療の必要がない。

3.Rhabdomyoma

 小児でもっとも頻度の多い、原発性心臓腫瘍である。tuberous sclerosisとの関連が指摘されている。これの悪い親戚にRhabdomyosarcomaという奴もいるが、「見つかった時には手遅れ」であることが多く、まず手術適応にはならない。(マニアックすぎで出ないかな?)

4.Metastatic Tumor

 転移性腫瘍のなかでもっとも出題されやすいのはズバリ
「renal cell carcinomaのIVC浸潤」であろう。きれいな画像が得やすいし、IVCを腫瘍がズリズリとRAに近づいてくる様は、なかなかスリルがある。その他の組み合わせとしては

SVC-nasopharyngeal ca.
PV-Lung ca.
anterior mediastinal-lypoma, tymoma
Pericardial-Breast ca., Lung ca.
(しかし、ここらへんもオタクすぎて出ないかも?)


以下、まったく試験に出ない話だが・・・

旧ソ連の反体制作家ソルジェニツインの「ガン病棟」には「tumor cordis」という章がある。「余命いくばくも無い患者の悲劇」を描いた章なのだが、いま思えば「単なるLA myxomaじゃん」と思ってしまう・・・本そのものは名作です。とくに、僻地出向中などに読むとしんみりさせられます。

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af; atrial fibrillation(JB-POT直前講座16)

atrial fibrillation ご存知、心房細動のことである。
日本ではafと略されるが、ニューヨーク(の私の留学先)ではA Fib.(エイ フィブ)と呼ばれていた。
「afは不整脈の一種であり、JB-POTには関係ないんじゃないの?」って・・・まあまあ・・・

心エコーの画面下部には、通常ECGが表示されている。TEEの画面だけでは判断のつきかねる問題も、同期するECGをヒントに考えるとたやすく正解にたどりつける場合がある。この場合のECGは、単一の誘導で目盛りもなく、なおかつ誰でも診断できる明快なものでなければならない。となると、もっとも出題しやすいのはズバリafであろう。(違うものが出題されても責任はとれませんが・・・)

画面下部のECGがafだった場合

1.まず、LAA(左心耳)をチェックする必要があります。afといえば、「LA内血栓」であるが、LAの中でもっとも血流がうっ滞しやすく血栓の出来やすいLAAは、TTE(経胸壁エコー)からは描出が困難です。「LAに血栓はない!」と診断するにはTEEが必須です。(が、TTEのレポートだけを見て「LA内血栓はありません」と診断する循環器内科医は少なくない・・・)このときに、Q-Tip(直前講座5参照)を「LA内血栓」と診断しないようにしましょう。

2.Maze手術(PV isolation)の適応があります。

3.E/A比は(当然のことながら)算出できません。

4.E波が心拍ごとにまちまちです。PHTやDTでMVAを求める場合は、5心拍の測定を平均するのが一般的です。


麻酔科が心機能の目安として術前診察ではEFチェックするのが一般的ですが、無論EFは心機能の全てを代表する値ではありません。EFとは通常LVEFの略であり、心臓の4つの部屋のうちのLV(もっとも大切な部屋ですが)機能の指標でしかありません。

心臓のポンプ機能=LV+atrial kick(心房の補充収縮)であり、atrial kickは正常心で約20%、病的な心臓では約50%になる場合があります。よって、麻酔管理上

患者1.EF45%でsinus
患者2.EF60%でaf

を比べた場合、多くの場合は前者の方が循環管理は楽チンです。

ちょうど、

病院1.月収45万、研究日有り、バイト黙認
病院2.月収60万、バイト厳禁

の病院で、「どちらが医者の生活が楽になるか」のようなものです。病的な心臓で「sinus→afになる」ということは「大学勤務医がバイトを禁止される」ぐらい心臓にとってつらいことなのです(と、大学勤務医の私は思います)。

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心臓麻酔&TEE研修先の選び方(JB-POT直前講座15)

今回の話題は試験には直接関係ないので、時間の無い方は読み飛ばしてください。

「TEEに興味があり、機器も買ってもらった。教科書・CDや学会セミナーでも勉強しているが、具体的な臨床判断のツボがいまいちわからない。6ヶ月~1年程度の研修で、JB-POT合格レベルの実力をつけることが可能だろうか?」

答えは、Yesです。

ストラディバリウスのバイオリンを入手して本とビデオで独学するよりも、スズキのバイオリンを購入してバイオリン教室に週一回通うほうが、早く効率よく上達します。麻酔科標榜医レベルの人が、下記のような施設で12ヶ月研修すれば(努力家ならば6ヶ月で)JB-POT合格は充分可能です。

Q1.1年間の心臓手術症例数
 A.300件以上
 B.200-300件
 C.100-200件
 D.100件未満

少なくとも年200(週4例)ほしいところ。

Q2.心臓手術の内訳
 A.成人、小児とも
 B.成人全般
 C.小児のみ、成人の特定の分野のみ(CABG専門など)

症例数が年300といってもその7割がoff pump CABGだったばあい、TEEの研修には不向きです。

Q3.TEE指導者は
 A.NBE(National Board of Echocardiography 現在日本国内には23名)取得
 B.JB-POT取得
 C.TEEに関する資格なし
 D.質問すると「資格なんてバカらしい」「麻酔そのものには関係ない」などと逆切れ

Q4.心臓麻酔指導者は過去2年間に
 A.英文筆頭原著論文あり
 B.和文筆頭原著論文もしくは英文症例報告あり
 C.学術論文の筆頭著書なし
 D.筆頭著書なしだが国際学会には毎年出席している(学会発表のデータ集めにこき使われ、学会中は留守番、しかも研究業績にはならない。あなたは、上司がタダで海外旅行する手伝いをしただけ)

Q5.研修中の扱いは
 A.常勤医ボーナス&社会保険あり
 B.非常勤日々雇用だが社会保険はある
 C.日雇い、保険なし
 D.無給

Q6.手術室に常設されているTEEは
 A.Phillips社5000以上もしくはAquson社Sequoia
 B.A以外(Alokaなど)
 C.常設されているTEEマシンはない

A.2点、B.1点、C.0点、D.-1点として、合計10点以上あればおすすめ、5点以下はわざわざ研修に出向する価値があるとはおもえません。


あまり関係ないと思われるものは

指導医が学会理事もしくは評議員
指導医が大学教授
指導医がアメリカ留学経験者(留学経験がないNBE合格者もいますし、留学経験のあるJB-POT不合格者もいます)

ちなみに、うちの大学はQ1-5はA.でQ6のみB.です(現在、機器買い替えの交渉中です。また、旧型機種のほうがNyquist limit、frame rate、verocity rangeなどをマニュアルで調整するために、超音波原理の勉強になります。)6ヶ月以上の研修期間の得られそうなかたは、ぜひメールください。

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maximum gradient/ peak-to-peak gradient (JB-POT直前講座14)

CVPが10mmHgで、三尖弁を逆流する血流速度を3m/sとすると
最高PA圧=10+4×3×3=46と算出でき、SGカテを使わずともPA圧を推定できる。

(直前講座13)では、上記のように書いた。しかし実際にこのような症例にSGカテを入れると、肺動脈圧は35/21などとTEEの計算値より最大肺動脈圧は少なめに表示される場合が多い。どうして、46と35のような違いがでてくるのだろうか?

その原因としては、最大PGには下記の2種類があることを理解する必要がある。

maximum gradient 瞬時最大圧較差
peak-to-peak gradient ピークからピークまでの圧較差

「pressure_gradient.pdf」をダウンロード

通常、心エコーによるデータは前者で、心カテーテル検査によるデータは後者である。
前者は後者の1.2~1.8倍であることが多いが、いずれの方法でも平均動脈圧はほぼ一致する。

さらに、心エコーでの圧較差は流速の二乗から算出されるために、CWの読みが1m/sずれただけで、圧較差が50%以上変わってしまうのはよくあることである。よって、「PG=100mmHgの重症AS」などという場合、その圧較差のデータが心エコーによるものか心カテによるものかを確認するのは、実は臨床的にはとても重要である。

たまに、地方部会などで
「PG=100mmHgの重症AS合併妊娠を、脊椎麻酔で安全に管理した」
といった一例報告を見かけるが
「どうせ、術前心エコーのmaximum gradient=100mmHgで、心カテをしていたらpeak-to-peak gradient=50-60mmHgぐらいの症例だったんだろうなあ」と思ってしまう。

本当にpeak-to-peak gradient=100mmHgの重症ASならば、ミダゾラム2mg筋注だけで循環虚脱をおこすこともある、まことに扱いづらい厄介な代物である。T4までの脊椎麻酔などしたら、(実際にみたわけでないが)無事ですむとはとても考えられないのである。


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Pressure Gradient and Modified Bernoulli's equation(JB-POT直前講座13)

PG; Pressure Gradient 圧較差
Modified Bernoulli's equation 簡易ベルヌーイの式

 うちの病院では心臓手術の95%でSwan-Ganzカテーテルを使用していない。TEEを使いこなせば、「麻酔科医が術中管理に必要な血行動態データはTEEより得られる」というのがうちの教授の持論である(私も同感である)。
 おかげで当院の麻酔科医は、SGカテのプライミングのために早起きする必要もない。(私が自分で心臓麻酔を担当する場合は、15分以内で準備が終了する。)頭側が配線でごちゃごちゃすることもないし、麻酔記録がCO/CI/SvO2の数字の羅列でいっぱいになることもない。外科医がSGカテを心臓に縫い付けたり、肺動脈をruptureさせる心配も不要である。

本物のベルヌーイの式には微積分がいっぱい出てくるので(私も理解してないし)割愛し、簡易式は以下のとおり
PG=4×(最大流速:v)2         (注;最後の2は二乗です)
PW/CWモードから狭窄部血流の最大流速を求め、それを二乗し4倍すれば、圧較差の概算値が求められる。

たとえば、CVPが10mmHgで、三尖弁を逆流する血流速度を3m/sとすると
最高PA圧=10+4×3×3=46と算出でき、SGカテを使わずともPA圧を推定できる。

またPWモードでは(nyquist limitがあるため、直前講座6参照)最高でも2m/s程度の流速しか測定できないために、16mmHg以上の圧較差はCWモードを用いる必要がある。

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Qp/Qs (JB-POT直前講座12)

Qp/Qs 肺体血流比

 心エコーを用いると、非観血的にQp/Qsを測定することが可能である(直前講座10-11参照)。心カテーテル法に比べて正確さを欠くために、臨床的には心エコーデータのみでVSDやASDの手術適応が決定されることはまれであるが、こういう計算問題は回答の正誤が明確でマークシート問題を作りやすい。

 まずはContinuous Equisionを理解する必要がある。(直前講座11参照)
SV=(他の弁もしくはLVOTの)弁口面積×(そこを通過する)TVI=MVA×MVAのTVI

ASD/VSDでは肺動脈でのSVは体循環でのSVの数倍であり、その比がQp/Qsとなる。具体的には

肺動脈のSV=肺動脈の断面積×肺動脈でのTVI
体循環(LVOT,MV,AVなど)のSV=LVOT(もしくはMV,AVなど)の断面積×そこでのTVI

そして、
Qp/Qs=肺動脈のSV÷体循環でのSV
から計算できる

試験の出題でTVIはすでに設問上で与えられている場合が多い。実際のTEE操作では、現在の1000万円クラスのエコー機器ならばTVIは、CWモードで得られた放物線のデータをトレースするだけでマシンが計算してくれる。(しかし、うちの手術室のTEEにはついてないんです・・・今年も申請書を書いたけれど通るかなあ・・・)

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MVA; Mitral valve area (JB-POT直前講座11)

 おおまかに言って、MVAの標準値は4~6cm2であり、MS(mitral stenosis)はMVAが2cm2未満で症状が出現し、1cm2が重症とされる。MSの重症度については、勉強熱心な循環器内の先生方が様々な分類法を提唱しているが、(勉強不熱心な私は)ここでは割愛する。MSについて試験対策的に重要なのは、分類や臨床症状よりも、ズバリMVAの測定方法である。
 TEEを使用したMVAの測定方法(で出題される可能性のあるもの)は以下のとおり(特に2~5)。言わすもながだが、(合格のためには)このBlogだけでなく教科書でもきちんと確認しておきましょう。

1.Pranimetry
 2Dモードエコー上の僧帽弁内周をぐるっとトレースするもの。ひねりがないので問題にはなりにくいが、実際のTEEの臨床ではもっとも一般的。
 健常人ではきれいに僧帽弁の全周を一画面で描出するのは困難だが、MS患者では比較的簡単に可能である。TGSAX(transgastric short axis)で左室短軸像を描出した後、プロベーを前屈させたまま1~2cm引き上げると描出できる(はずだ)が、あまり引き上げすぎると食道~噴門の裂傷を招くので、描出しづらいときにはさっさと他の方法に切り替えましょう。

2.Pressure Half Time
    MVA=220/PHT
 僧帽弁を通過する血流速度のE波が1/√2に減衰する時間(=PHT)から間接的に求める方法。

3.Deceleration Time
    MVA=759/DT
 僧帽弁を通過する血流速度のE波が(A波がなかったと仮定して理論上)0まで減衰する時間(=DT)から間接的に求める方法。

 2~3に共通するのは、COPD患者の経胸壁エコー(TTE)のように良好な2Dエコー画像が得られない症例でも、E波だけならば心電図をたよりに捕らえることも可能であり、これらの方法を知っていればほぼ9割以上の症例でMVAを算定することができる。「220」「759」とは、データの集積による経験値であり、理論的に算定された係数ではないため他の弁では適応できない。

4.Continuous Equision 連続の式
 SV (Stroke Volume)=(他の弁もしくはLVOTの)弁口面積×(そこを通過する)TVI=MVA×MVAのTVI
TVI; Time-velocity Integral(文献によってはVTI)というと、大学入試のころの微積分のつらい思い出がよみがえり、ついしり込みしそうになる(私だけ?)が、実際の試験で問題を解くのに必要なのは、中学レベルの数学で充分である。試験問題では、TVIの値はすでに与えられていることがほとんどで、我々はそれに弁口面積(円の面積=2πr2・・・憶えてますよね)を乗じるだけでSVを求めることができる。

5.PISA
 MVA={2π(aliasingまでの距離)2}×{α/180}×{カラードップラーのaliasing/CWモードで測定した最高流速}
MRにおける逆流量の定量化においてERO(effective regurgitant orifice)を求める手法と同様であり、それにα/180の角度補正を追加する。(JB-POT直前講座7参照)

連続の式やPISAは他の弁やQp/Qsの算出でも用いられるので、この際きちんとマスターしておきましょう。


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ASD; Atrial Septal Defect (JB-POT直前講座10)

ASDは先天性心奇形ではもっとも数が多く、また成人を対象とするような一般市中病院の手術室でもしばしば登場する。よって先天性心疾患のうちで「もっとも試験に出やすい」疾患であると覚悟する必要がある。

ASDの分類と出題ポイントを列記すると

1.Ostium Secundum type 二次孔欠損型

ASDの中でもっとも多く、約70%が相当する。卵円孔部分の欠損。近年ではカテーテルインターベンションによる閉鎖も一般化しつつある。

2.Ostium Primum type 一次孔欠損型

ASDの約20%が相当。心房中隔の心室側が欠損し、しばしば僧帽弁前尖のcreftやMRを伴なう。教科書によっては、ECD(心内膜床欠損)などと記される場合もある。21トリソミーに好発する。

3.Sinus Venosus type 静脈洞型

約10%が相当。SVC(まれにIVC)とRAの接合部に欠損孔がある。しばしばPAPVR(部分肺静脈還流異常) を合併する。

4.Unroofed coronary sinus type 冠静脈洞型

頻度は1%以下、coronary sinusとLAが交通することで発生する。(JB-POT直前講座9を参照)PLSVCを併発することが多い。

それぞれの分類における併発しやすい異常はおさえておきたい。これと、心エコーによるQp/Qsの求め方(後述)をおさえれば、ASDは制したも同然である。

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Remnant(JB-POT直前講座9)

Remnant、本来は残り物やら切れ端と言った意味である。心エコー業界では解剖学的な胎児期の遺残構造物をさす。試験に出題されそうなRemnantを列記すると

1.PFO;Patent Folame Ovale 卵円孔開存

 健康成人においてもPFOは約25%の症例で、LA>RAの圧格差により機能的に閉じているだけであり、器質的には閉じていない。よって、咳などによるRA圧の上昇によって、瞬間的にPFOが開くことはまれではない。心臓麻酔関係では、opp pump CABGのスタビライザー圧迫や、術中肺塞栓にともなうRA圧上昇などで開くことがある(あんまり遭遇したくない状況であるが)。
 直前講座8で前述のように、LVASの麻酔などにおいてPFOの有無を確認するよう要求される場合がある。具体的には、Valsalva動作(挿管中ならば肺を加圧して急に離すと、一時的にLA圧<RA圧となる)や発泡剤(あるいは単に泡の入った生理食塩水)によるコントラストのLAへの移行、によって確認する。

2.PLSVC; Persistent Left Superior Vena Cava 左上大静脈遺残

 胎生期には上大静脈は左右に2本あり、発生の過程で右側で一本に合流してゆくが、なぜか上大静脈が2本のまま残っている人がいる。PLSVCは冠静脈洞(coronary sinus)に開口することがほとんどで、このばあいのcoronary sinusは拡大していることが多い(10mm以上)。
 左上肢の点滴ラインより泡の入った液体を注入するとcoronary sinusに泡が出現することで確定診断できる。PLSVCそのものは治療が必要ではないが、逆行性心筋保護液の注入が困難であり、また人工心肺の脱血管が1本余分に必要になる(あるいはクランプする必要がある)。
 まれに、拡大したcoronary sinusのLA側に窓状の欠損をともない、そこを経由するL→Rシャントを併発するものがあります。(私も文献で読んだだけで実際にみたことはありません)。Unroofed type ASDと呼ばれます。(ASDの出題ポイントについては後日)。

3.Eustachian Valve
RAとIVCの接合部にたまにみられる薄い膜状の三日月型の弁。大きいとIVCへの脱血管を挿入する際に切り取る必要がある。またASD閉鎖術で間違えてこの弁を閉じてしまった、という症例報告もある。

4.Chiari's network
RA内に浮遊する網や水草のような構造物。発生学的にはEustachian Valveがさらに網状に退化したもの。治療の必要はない。

5.Thebesian (Thebasian) Valve
coronary sinusのRAへの開口部付近にたまにみられる弁。治療の必要はない。

3~5は「RA内にあるのは(ないのは)どれか?」といったスタイルで出題されることも考えられます。

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LVAS; Left Ventricle Assisting System (JB-POT直前講座8)

LVAS; Left Ventricle Assisting System文献によってはLVAD; Left Ventricle Assisting Deviceと表記される場合もある(が、こちらは某社の登録商標なので、一般名としてはLVASが妥当であろう。)

文字通り、LVのポンプ機能を補助する装置であり、心臓移植となるような重症心不全に装着して移植ドナーの出現を待つ場合"bridge to transplantation"にしばしば装着されるが、心筋炎などの一時的な心不全に対しての回復までの補助"bridge to recovery"としても用いられる。この仲間にはRV機能を補助するRVASもある。LVAS+RVASの2つを1人の患者に装着することもあり、これをBiVAS(あるいは両VAS,2階建てVAS)などとも呼ばれる。これらを総称して補助循環という。(IABPやPCPSまで含まれる場合もある。)

日本国内で、この装置をまともに稼動させている病院は10ヶ所以下であり、うちの病院は幸か不幸かその1つである。重なったときには週に3回ぐらいLVASがらみの麻酔をかけることもあり、2005年に日本中でもっともLVASの麻酔をかけているのは私に違いない(エヘン!)。というわけで、世の中の90%以上の麻酔科医はLVASなど目にすることなく麻酔科医人生を終えるのだが、JB-POTの出題アウトラインには、「補助循環」が含まれており、現に第一回試験ではLVASの症例問題が出題された。

というわけで、LVASの試験に出そうなツボを列記すると

1.PFO
LVASはLAもしくはLV心尖部に脱血管を装着し、体外の装置で加圧し、上行大動脈に送血管を装着することが一般的である。装着前のTEEで絶対チェックする必要があるのがPFO(卵円孔開存)の有無である。PFOのある症例で脱血管から吸引を開始すると、陰圧でRA→LAシャントが発生して補助循環が成立しなくなる危険性がある。(PFOの詳細は後日)

2.脱血管の位置および血栓(特にLA脱血)
今日ではLV心尖部に脱血管を装着することが主流であり、LA脱血には問題が多いとされている。しかし、試験対策的には「問題が多い=問題を作りやすい」と考えるべきであろう。LA脱血は、脱血管が深いとすぐMRを作りやすい。また、LV内の血流がよどむために心尖部に血栓を作りやすい。

うちの教授が書いた本もあります。よろしければ買って下さい。

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PISA: proximal isovelocity surface area (JB-POT直前講座7)

しばらく本業が忙しくて更新をサボってしまってみません。

「麻酔科医が刻々と変動する心臓手術の現場でこのようなめんどくさい血行動態計測をしているヒマがあるか?」というツッコミはさておき、試験対策という意味ではPISA(直前講座6参照)は大変重要である。計算問題になりやすいために、マークシート問題が作りやすい。きちんと理解しておけば確実に得点できる分野なので、「1回で合格する」ためには抑えておきたい。

試験対策上でPISA法が関係するのはほぼ、MRの逆流定量化とMSの弁口面積測定に限定される。
カラードップラーを用いると、MRの場合は僧房弁のLV側に、MSの場合は僧房弁のLA側に半球状の吸い込み血流が現れる。吸い込み血流の流速がNyquist limit(直前講座6参照)を超えると、カラードップラーの表示色は反転するために、MRの場合は半円、MSの場合は扇形のエリアが出現する。

PISA法は、カラーバーに表示されるNyquist limitで包まれた半球の体積より、MRの逆流量もしくはMSの弁口面積(=ERO)を測定する方法であるが、MSの場合は厳密には半球ではなく扇形回転体のため角度補正が必要になる。(試験問題だと計算式にα/180°を乗ずる必要がある。)

正確な数式は立派な先生の書いた教科書やこちらなどで確認してください。

実際にPISA法で心臓手術症例の血行動態評価をしたい場合は、すくなくとも2人以上の麻酔科医が部屋にいる状態で実行することをおすすめします。

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Nyquist limit & aliasing (JB-POT直前講座6)

Nyquist limit(ナイキスト リミット)
aliasing (エイリエイジング) と発音する(と外国人にもだいたい理解してもらえる)。

詳しい数式は(私も理解していないので)テストに関係する最低限の知識のみ記す。

紫外線より波長の長い(=周波数の低い)赤外線のほうが深部に到達しやすいように、PRF(JB-POT直前講座3を参照)も低い(=波長の長い)ほど深部に到達しやすい。しかし、深い場所でPWによって補足できる血流速度には限界(=Nyquist limitとよび)があり、これはPRFに比例している。

よって、
PRFが低い=深くまでビームが届くが、速い流れは捕捉できない。
PRFが高い=深くまでビームが届かないが、速い流れが捕捉できる。

Nyquist limitを超えた流速の血流は折れ返し現象(aliasing)を生じ、あたかも調子の悪いTVのように反対側から折り返したごとく表示される。aliasingを軽減するには

1.PRFを上げる(一部の高級心エコー機種では可能、うちにはないが・・・)
2.基線を下げる。(ほぼ全ての機種で可能、約2倍まで表示可能になる)。PWモードを使える人ならば無意識のうちにこのテクニックを使っていると思うが、これにはzero shift法という名前がついているので(少なくとも試験までは)憶えておこう。

カラードップラーもPWの一種なので、Nyquist limitやaliasingが存在する(=color aliasing)。加速される血流パターンで周辺部が赤系で中心部が青系(またはその逆)のものがそうである。これを利用したのがPISA;Proximal isovelocity surface area法である。(詳細は後日)

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Q-tips (JB-POT直前講座5)

Q-tipsとはアメリカでもっともポピュラーな綿棒の商品名であるが、TEE業界ではLAにおけるPV流入部の折れ返り部分を指す。

mid-esophageal levelで、左心耳(LAA)と左肺静脈(LUPV)の流入部を描出しようとすると、この折れ返りが綿棒のような有茎性の血栓のように見える。”Warfarin (Coumadin) ridge”という別名もあり、以前は間違えて抗凝固剤を投与されることもあったらしく、このような名称がついたらしい。

normal structureの一部であり、治療の必要ない。

以下は、全く試験には関係ない話ですが・・・
このQ-tips(綿棒のほうです)は「現代工業デザイン」の名作として、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されています。他には、バンドエイド、M&Mチョコレート、キッコーマンの醤油ビンも収蔵されています。

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4つの弁 (JB-POT直前講座4)

心臓には4つの弁があり、TEE初心者はこの4弁の位置関係を理解する必要がある。すくなくともJB-POT合格には必須である。とはいっても、(JB-POTを受験するような)30過ぎの医師には学生時代のような丸暗記力は期待できない。というわけで、私がNYにいるころに投稿した暗記法を、今回は御紹介したい。「そんなこと知っとるわい」という方は読み飛ばしてください。

両手を握って、図のPosition MとPosition Tのように置いてみよう。M弁は4つの弁のうちでもっとも背側に位置し、T弁はその右やや前方位置している。この2つの弁はほぼ同サイズである。M弁は2尖であり前方よりそれぞれA1,A2,A3およびP1,P2,P3に分類される。右手を Position Aへ動かしてみよう。A弁は3尖でありM弁よりやや小さく、右冠尖がもっとも前方に位置している。左手をPosition Pへ動かしてみよう。P弁はA弁とほぼ同じ大きさで、前方やや左に位置している。

Anesthesiology 2004; 101: 1050-1

「4_valve_fig.doc」をダウンロード

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PRF; pulse repetation frequency (JB-POT直前講座3)

PRF; pulse repetation frequency
日本語では「パルス繰り返し周波数」などと訳されているが、麻酔科関係の教科書だと詳しい説明が省略されているものも多い。

講座2で前述したように、PWモードでは超音波の放出時間と休止時間が繰り返されている。この、放出-休止のサイクルが1秒間に何回発生しているかがPRFである。

pw_scanin

この図で1メモリ=0.2秒(全部で1秒)と仮定すると
上の波;周波数=10Hz,PRF=1.67
下の波;周波数=10Hz,PRF=2.5
となる

通常の成人用TEEプローベでは、PRFは3~5KHz程度に固定されているものが多い。

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Duty Factor (JB-POT直前講座2)

Duty Factor 
工学系の辞書では「時間負荷率」などと訳されている。一般的な医学辞書ではまず載っていない。

PW (Pulsed wave)モードにおいては、超音波は一定のcycleで超音波が発射されたり、休んだりを繰り返している。

pulseが放射される時間÷(放射される時間+休んでいる時間)=Duty Factorである

Continuous waveモードではたえず超音波が発射されているので、Duty Factorは100%(もしくは1.0)である。
0%のときは・・・・単なる休みである。

pw_scanin

この図の場合
上の波のDuty Factor=33%
下の波のDuty Factor=50%

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Stand Off (JB-POT直前講座1)

私の専門分野の一つはTEE(transesophageal echocardiology)といって、食道に入れた超音波プローベから心臓の様子を観察することである。特に手術中に麻酔科医がTEEを操作することは、(心臓手術においては)かなり一般的なことになりつつある。NBE(National Board of Echocardiology)というのはこの分野における米国の国家資格であり、JB-POT(Japanese Board of Perioperative TEE)というのは2004年よりはじまった同様の日本の学会資格である。

次回のJB-POT試験は9月、受験勉強に励む皆さんの参考になりそうなキーワードについて、不定期だがまとめてみたい。

TEEに関する教科書の某訳書をよんでいたところ"Stand Off"という単語かまともに訳出されていないことに気付いた。Stand Offというのは、表面直下の対象物をエコーで観察する際に、近すぎることによって像を描出しずらくなるために、コンニャク状のマクラを体表と超音波プローベの間にはさむことがある。この場合のマクラをさす。

下記Hpの「TEE単語帳」も参考になるかも。

なお、次回の直前講座で取り上げて欲しいキーワードのある方、コメントかメールをください。

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